本研究においては、日本の明治前期における議事機関において、議員たちがどのように討論を行ってきたかを解明することをめざした。具体的には、とくに柏崎県に設置された郡中議事者を中心に考察を進めた。 平成25年度は、明治0年代における議事の事例を考察するための事例たる郡中議事者に関する史料調査として、長岡市立中央図書館文書資料室にて鈴木家文書・今井家文書・鈴木訥叟の日記などを調査した。 平成26年度は、郡中議事者に関する史料調査として、新潟県柏崎市立図書館に所蔵されている芋川区有文書および岡村康久氏所蔵文書の調査を行った。後者の史料群からは、郡中議事者が設置されていた時期である明治2~3年の前後の時期の『御用留』から、郡中議事者に関する法令を調査できた。また、この事例を日本近代史研究に位置付けるべく研究史の整理を進め、その成果は2016年7月近世イギリス史研究会特別例会にて開催された青木康『イギリス近世・近代史と議会制統治』書評会でのコメント、2017年2月韓国で行われた第16回韓日民衆史共同ワークショップでの報告「日本における近世近代移行期研究と民主主義」で発表した。 平成27年度は、研究の総括である研究成果のまとめを行った。その成果は、2017年6月4日に開催された2017年度第47回明治維新史学会大会での報告「柏崎県における郡中議事者」において発表した。報告では、郡中議事者が、錯綜する所領関係を生産という側面から領域的に再編成しなおした地域から選任されている点を指摘した。さらに、6月に公刊された歴史科学協議会編『知っておきたい歴史の新常識』(勉誠出版、2017年)で、「日本の議会事始め」を執筆するという成果を得た。そこでは、明治初年の議事機関における討論の実態について、原理的な意見の相違が生み出す対立の激化が、明治初年の地方議会で緩和されている様相を述べた。
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