本研究では、明治前期の議事機関においてどのような討論が行われていたかについて研究した。明治初期の議事機関の公議所では、原理的な正当性の対立によって、時には対立相手の抹殺を狙うこともあった。しかし1870年代に各地で開設された県会では、討論のルールを制定することで討論の実質化がはかられた。 また、議事機関の議員がどのように選出地域を代表して討論に参加しているかについても分析した。柏崎県の郡中議事者は、領域的に編成された地域代表として選任された。しかし、選ばれた郡中議事者たちは、近世的な社会原理に基づき行動していた。つまり、近代的な制度と、近世的な実態の齟齬が郡中議事者の事例においてもみられた。
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