研究課題/領域番号 |
15K21466
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
山崎 晴丈 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 助教 (20456776)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テロメア / G0細胞 / 定常期 / 分裂酵母 |
研究実績の概要 |
多細胞生物を構成する多くの細胞は増殖しない状態を保っている。また酵母をはじめとした単細胞生物も,自然環境では生涯の多くの時間を増殖停止状態で過ごしている。これまで細胞が増殖している状態でのテロメア維持機構については精力的に研究がなされてきた。本研究では今まで焦点が当たることがほとんどなかった,非増殖細胞(G0細胞)におけるテロメア維持機構の解明を分列酵母用いて行うことを目的としている。 我々が行ってきた研究により,窒素源を枯渇させて誘導したG0細胞では,テロメア結合因子であるシェルタリン構成蛋白質をG0期特異的に欠失させても細胞の生存率に変化はないことが明らかとなった。そこで同様に増殖を停止した細胞でも,培養の定常期の細胞に着目して研究を行った。 まず少なくとも定常期に入って4日間はテロメア長に変化がないことを確認した。次に定常期に入ってから,シェルタリン構成蛋白質を転写レベルでシャットオフすると同時に,蛋白質の分解も誘導する系を導入したところ,Taz1をシャットオフした場合に,生菌率が大幅に減少することが明らかとなった。このことから静止期にはTaz1がテロメアの維持に重要な機能を果たしていることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
定常期の細胞でのテロメア維持機構を解明する端緒となるデータを得られたが,窒素源誘導によるG0細胞のテロメア維持機構については大きな進展は得られていないため,「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝学的な方法によって非増殖細胞に特異的なテロメア維持因子の探索を行う予定である。この際,「テロメア維持に破綻が生じると,テロメア近傍数kbpも同時に失われる」という増殖細胞での知見を援用する。具体的には,まず染色体のテロメア近傍に選択マーカーを導入した株に対して,変異原処理により変異導入を行う。その後,細胞周期がまわっている状態では温度感受性を示さないが,G0期に温度を上昇させた際にテロメア近傍のマーカーを失い,選択培地で生育できなくなるという温度感受性を示す株群を取得する。それらの株を野生型株と交雑させて純化を行い,劣性の変異を持つ株にDNAライブラリーを導入して温度感受性を回復する株を取得することにより,G0期に特異的なテロメア維持因子の同定を行う。現在までにテロメア近傍に選択マーカーを導入した株の作製を終えている。 また定常期の細胞の維持にTaz1が重要である可能性が示唆されたことから,定常期にTaz1に結合する因子を生化学的に取得し,その機能を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的株の作製に時間を費やし,生化学的な解析を平成28年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
質量分析に必要な試薬の購入に用いる。また質量分析により得られた因子の機能解析のためのプライマー,DNAポリメレース,抗体の購入に用いる。
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