研究実績の概要 |
分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの増殖細胞において,テロメアの維持に必須なシェルタリン複合体を構成する蛋白質(Pot1, Tpz1, Ccq1, Poz1, Rap1, Taz1)について,増殖細胞とそこから窒素源を枯渇して誘導したG0細胞での発現量の違いについて検討した。この実験はこれまでにも行っていたが,結果が安定していなかったため,再度検討を行った。S. pombeの野生型株である972株を形質転換し,すべての因子にFlagタグが融合されたものを発現する株を構築した。得られた菌株の増殖細胞とG0細胞を用意し,全細胞抽出液に対して,抗Flag抗体を用いてウェスタン解析を行った。その結果,1細胞中で発現していると考えられる蛋白質の量が,増殖細胞に比べG0細胞では,Pot1, Tpz1, Ccq1, Poz1, Rap1に関しては約1/4程度に減少していた。またTaz1は増殖細胞では発現が見られるものの,G0細胞では発現が極端に低下していた。これらの株を用いてクロマチン免疫沈降法を用いて,シェルタリン構成蛋白質がテロメアに局在している量を検討したところ,Taz1のテロメア局在がG0細胞で減少していることを示唆する結果を得た。これらのことから,G0細胞では増殖細胞と異なるテロメア構造を取っている可能性が考えられた。また同様の実験をウラシル要求性の株で行ったところ,G0細胞でのCcq1の発現が極端に低下していたが,細胞の生菌率に顕著な低下は見られなかった。これらのことから,細胞の栄養状態によってG0細胞のテロメア構造が大きく異なっている可能性と,G0細胞でのテロメア維持機構が増殖細胞と大きく異なっている可能性が考えられた。
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