研究実績の概要 |
分裂酵母のテロメアに局在化する蛋白質として,シェルタリン構成蛋白質(Pot1, Tpz1, Taz1, Rap1, Poz1, Ccq1)が知られている。これらの蛋白質のG0細胞での機能を明らかにすることを目的に実験を行った。 taz1+,rap1+,poz1+の破壊株を作製し,増殖細胞とG0細胞(窒素源枯渇により誘導)の生菌率を測定した。その結果,poz1+破壊株は野生型株と同程度の生菌率であった。一方,taz1+破壊株は窒素源枯渇後5日目まで野生型株よりも生菌率が低下したが,それ以降13日目まで生菌率が低下することはなかった。また,rap1+の破壊株は野生型株に比べ徐々に生菌率が低下した。taz1+破壊株の窒素源枯渇後の生菌率の低下は,G0細胞の導入にTaz1が必要だが,G0細胞の維持には必要ではないとするこれまでの報告と合致する。一方,Rap1はG0細胞の維持に必要であるという重要な知見が得られた。 また昨年度までにシェルタリン構成蛋白質のG0細胞での発現量を検討し,Taz1蛋白質は増殖細胞に比べG0細胞で発現が大幅に低下するという結果を得ていた。しかし集菌の際にTCAを添加したところ,他のシェルタリン蛋白質同様,1細胞当たりのTaz1蛋白質量は増殖細胞に比べG0細胞で1/4程度に低下しているという結果を得た。 次にG0細胞では細胞核が凝縮することから,テロメア周辺のヘテロクロマチンが亢進している可能性についても検討した。テロメアから10 kb, 30 kb, 563 kbのところにカナマイシン耐性遺伝子を挿入し, G418含有培地で培養後,G418非含有培地でのコロニー形成率を測定した。その結果,どの株においても,増殖細胞とG0細胞でコロニー形成効率に変化はなかった。このことから,増殖細胞とG0細胞でテロメア近傍のヘテロクロマチン状態に変化はないことが示唆された。
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