研究課題/領域番号 |
15K21469
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
小山 大介 金沢工業大学, 先端電子技術応用研究所, 講師 (60569888)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超低磁場MRI / シミュレーション / フラックスゲート磁力計 |
研究実績の概要 |
本研究では「実用的な超低磁場MRI計測システム」の開発を目的として、磁気センサや磁場パルス発生法、データ解析アルゴリズムなどに関する研究を行う。本年度は主に磁気センサシステムの開発を進めた。 超低磁場MRIでは検出する磁気信号が極めて弱いため、SQUIDと呼ばれる超伝導を利用した磁気センサが利用されてきた。しかし、センサの超伝導状態を保つために冷媒を使うため、装置の小型化や検出器の最適配置などに制約が多い。また、SQUIDセンサはその高感度さゆえに、MRI計測用のパルス磁場によって安定した計測が難しくなる。本年度は、室温センサによるMRI信号検出の実現を目指し、センサシステムの開発をおこなった。 はじめに、信号検出のためのコイル形状やチャンネル数、感度をシミュレーションするためのソフトウェアを作成した。従来のMRIシミュレーションソフトウェアは、主にパルスシーケンスと得られる画像に関してシミュレーションを行うものであり、MRIユーザーが利用するためのものであった。本研究で開発したソフトウェアでは受信コイルの形状や、それによって得られる時間波形をベースとしており、システム開発に利用することに特化したソフトウェアとした。作成したソフトウェアを利用し、検出コイルの径とセンサ数を変数としたMR画像向上のために数値実験を行った。開発を進めている磁気センサの感度との関係を考慮しつつ、最適な形状・数・配列を検討中である。 本研究では、検出コイルとフラックスゲート磁力計を組み合わせたマルチチャンネル磁気センサシステムの構築を目指している。本年度は、1ユニットあたり8チャンネルのフラックスゲート磁力計用電子回路の製作を行い、50pT/sqrt(Hz)程度の感度を得られることが分かった。また、フラックスゲート磁力計と組み合わせて使用する検出コイルの形状・特性に関する検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はシミュレーションソフトウェアやフラックスゲート磁力計等の要素技術開発において、当初見込んでいたスケジュールより時間がかかってしまい、それにともなって、センサアレイの全体構成の決定が遅れている。その理由の一つとして、シミュレーションに使用する予定だったコンピュータの故障があった。センサシステムの開発は平成28年度前期にずれ込む見込みである。一方、作成したシミュレーションソフトウェアはMRIパルスシーケンスのシミュレーションにも役立つものであり、平成28年度以降に予定しているパルスシーケンス開発を効率的に進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況の欄に記載したとおり、センサシステムの開発を引き続き行う計画である。平成27年度までにおこなったシミュレーション結果を元にセンサアレイを構成する。 加えて、平成28年度はMRI計測をおこなうための磁気シールドとパルスシーケンサのハードウェア部を製作する。磁気シールドは既に試作済みのシールドボックスを利用し、アクティブ磁気キャンセルシステムを追加することで、磁気遮蔽率及び均一度を向上させる計画である。また、パルスシーケンサ用ハードウェアの開発においては、平成27年度に開発したシミュレーションソフトウェアを利用してパルスシーケンスに関するシミュレーションを利用して、効率的に設計・製作を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に旅費について、研究打合せや学会発表の回数が計画よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
磁気センサシステムの開発として、主に、検出コイル用の線材の検討や、アレイ状ボビンの製作に使用する計画である。
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