研究実績の概要 |
平成29年度は,平成28年度に構築した小脳運動学習機構のスパイキングニューラルネットワークの学習性能を評価するために,多関節アームのフィードバック誤差学習を実施する予定であった.しかし,スパイキングニューラルネットワークのカオス性をカオス共鳴に最適な状態に遷移させるためには内部パラメータのみの調整では難しいことが判明した.そのため,非線形写像の構造を外部信号により制御する手法の考案が新たに必要となった.そこで,その手法の構築のために,スパイキングニューラルネットワークよりも比較的単純なcubic離散写像とカオスニューラルネットワークに対して,外部フィードバック信号によってカオス共鳴に最適な状態へとダイナミクスを遷移する手法を考案し,その信号応答性の評価を行った(SICE Annual Conference 2017で成果を発表).また平成28年度に実施した状態跳躍を伴うスパイキングニューラルネットワークのカオスルートとカオス共鳴への関連について,更なる検討を行い,カオスの縁付近でアーノルドの舌の特性により,カオス共鳴の性能が最大化することを確認した(Scientific Reportsに2本の原著論文,システム制御情報学会に1本の原著論文,学会発表2件として成果を発表). 今後の研究の進展としては,この新たなカオス制御手法に基づき,当初平成29年度に実施予定であった小脳運動学習機構のスパイキングニューラルネットワークの学習性能を評価するために,制御系の性能試験でよく用いられる多関節アーム(M. Katayama et al.,Biological Cybernetics, 1993; I.T. Tokuda it et al., Neural Networks, 2010)に対してフィードバック誤差学習を実施し,実際の小脳のような制御と精巧な運動学習が同時に進行出来る画期的な運動学習機能を実現することが期待される.
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