研究課題
本研究計画では細胞組織内の可溶性血清蛋の保存が良好に行える生体内凍結技法などの新規的解析手法を用いて、小腸吸収上皮細胞の免疫組織化学的解析および超微形態学的解析を行い高脂肪食摂取による腸管粘膜防御機能への影響を明らかにすることである。さらに、糖吸収阻害薬(SGLT)による腸管粘膜に対する機能改善効果を明らかにし、肥満や糖尿病メカニズムの解明および予防に役立てることである。平成27年度は糖尿病マウスモデルとして 高脂肪食マウス(60Kcal% fat Diet Induced Obesity : C57BL/6J mice)を作製した。結果、通常食マウス(16Kcal% fat Diet)と比較して20週齢の高脂肪食マウスでは体重及び血糖値で優位な上昇がみられた。さらに、20週齢の高脂肪食マウスと同週齡の通常食マウスにSGLT阻害剤(フロリジン)投与実験(フロリジン/DMSO/薬剤非投与群)を行った。20週齢の高脂肪食マウスのフロリジン投与後のみに、優位な血糖低下を認めた。ELISA法による血清、糞便および尿中のIgAとTGF-βの解析を行った。透過型顕微鏡による超微形態学的解析では、生体内凍結技法による試料作製は凍結の影響により観察できる視野が制限されてしまったため、腸管組織を切除細切後に2.5%グルタールアルデヒドによる浸漬固定もしくは灌流固定後、1%四酸化オスミウム後固定しアルコール脱水を行い、エポン包埋した試料を作製した。一部の試料はOTO法とウラン・鉛のブロック染色を行い樹脂包埋した後、Serial Block Face-Scanning Electron Microscopy(SBF-SEM)による解析を行った。DIOマウスでは腸上皮細胞の頂上部から基底部にかけて多数のエンドソームを確認した。さらに、腸上皮細胞間隙から基底膜側においても同様の顆粒を多数認めた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度に計画されていた高脂肪食動物モデルは、ほぼ予定通りに作製することができた。しかし、当初の研究計画では生体内凍結技法による電顕試料作製を検討していたが、凍結の影響により観察できる視野が制限されてしまった。そのため浸漬固定と灌流固定による試料作製を行い、補完データを取得した。また、一部の試料はOTO法とウラン・鉛のブロック染色を行い3D電子顕微鏡 (SBF-SEM)を用いて、腸管上皮細胞を含む腸管粘膜の超微細立体構造の解析を実施中である。平成28年度においても生体内凍結技法による試料作製および解析を予定しており若干遅れてはいるが、おおむね順調に進展しているといえる。
平成27年度の動物実験で作製した試料の解析とともに(1)高脂肪食摂取による腸管吸収機構の変化を非特異的なトレーサーであるHorseradish peroxidase(HRP)をDIOマウス管腔内に投与し、小腸吸収上皮細胞への取り込みおよび通過への影響を解析する。生体内凍結技法による試料作製が計画どおりに進まない場合は、浸漬固定と灌流固定により試料を作製し、補完的なデータ取得を試みる。(2)高脂肪食摂取による小腸粘膜機能を解析するためパラフィン切片および脱エポン処理を行った厚切り切片による免疫組織化学的解析を行う。さらに、脱エポン切片と隣接する超薄切片による電顕観察を行い、小腸吸収上皮細胞の細胞膜構造および細胞小器官の微細構造変化を解析する予定である。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 1-10
10.1038
Med Mol Morphol
巻: Epub ahead of print ページ: 1-9
10.1007/s00795-016-0134-7
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