研究課題
本研究では細胞組織内の可溶性血清蛋の保存が良好に行える、生体内凍結技法などの新規的解析手法を用いて、小腸吸収上皮細胞の免疫組織化学的解析および超微形態学的解析を行い、高脂肪食摂取による腸管粘膜防御機能への影響を明らかにすることである。さらに、糖吸収阻害薬(SGLT)による腸管粘膜に対する機能改善効果を明らかにし、肥満や糖尿病メカニズムの解明および予防に役立てることである。平成28年度は糖尿病マウスモデルとして 高脂肪食マウス(60Kcal% fat Diet Induced Obesity : C57BL/6J mice)を作製し、SGLT阻害剤投与(フロリジン投与、vehicle投与、薬剤非投与の3群を作製)を行った。さらに、(1)高脂肪食摂取による腸管吸収機構の変化を非特異的なトレーサーであるHorseradish peroxidase(HRP)を高脂肪食マウス管腔内に投与し、小腸吸収上皮細胞への取り込みおよび通過への影響を解析した。結果、光学顕微鏡による観察では、高脂肪食マウスおよび通常食マウスともに腸上皮細胞質内の頂上部においてHRP陽性像を認めた。しかし、透過型顕微鏡およびSerial Block Face-Scanning Electron Microscopy(SBF-SEM)を用いた超微形態学的解析では、高脂肪食マウスにおいて高脂肪食摂取の影響と思われるエンドサイトーシスの分泌顆粒が、腸上皮細胞の頂上部から基底部および腸上皮細胞間隙から基底膜側にかけて多くみられたため、トレーサーであるHRPとの判別が困難であった。(2) パラフィン切片および脱エポン処理を行った厚切り切片による免疫組織化学的解析では、通常食マウスに比べ高脂肪食マウスにおいて粘膜固有層内のIgA陽性細胞数の減少を認めた。特に絨毛の中央部から先端部にかけて、粘膜固有層内のIgA陽性細胞数の減少を強く認めた。
2: おおむね順調に進展している
当初は、凍結技法による電顕試料作製を検討していたが、観察できる視野が制限されてしまったため、平成28年度では、主に浸漬固定と灌流固定による試料作製を行い、データを取得した。一部の試料は、OTO法とウラン・鉛のブロック染色を行い3D電子顕微鏡 (SBF-SEM)を用いて、腸管上皮細胞を含む腸管粘膜の超微細立体構造の解析を実施中である。一方、光顕試料作製では生体内凍結技法を用いることにより可溶性血清蛋白の解析を順調に行うことができた。平成29年度においても生体内凍結技法による試料作製および解析を予定しており、若干遅れてはいるがおおむね順調に進展しているといえる。
平成28年度のHRP取り込み実験では、腸上皮細胞において高脂肪食吸収像との判別が困難となってしまったため、(1)空腹時でのHRP投与を行い再度データ取得を試みる。また、(2)脱エポン切片と隣接する超薄切片による電顕観察を行い、光顕観察と対応した小腸吸収上皮細胞の細胞膜構造および細胞小器官の微細構造変化を解析する。透過型電子顕微鏡による解析が困難な場合は、SBF-SEMでの3次元再構築を用いて、補完的なデータ取得を行う。また、平成28年度に作製した薬剤投与群(フロリジン投与、vehicle投与、薬剤非投与の3群を作製) の免疫組織化学的解析をさらに進めるとともに、(3)リハビリテーション(食事療法)の有効性を検討するため、高脂肪食マウスに対し、低脂肪食などの食餌内容変更による長期間飼育および試料採取を行う予定である。
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Neuroscience Research
巻: 115 ページ: 21-28
10.1016/j.neures.2016.10.004
https://www.kenkoudai.ac.jp/modules/waffle0/index.php?t_m=ddcommon_view&id=28&t_dd=waffle0_data2
http://www.med.yamanashi.ac.jp/basic/anat01/members.html