研究課題/領域番号 |
15K21479
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
平野 可奈 金城学院大学, 生活環境学部, 講師 (00712663)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 穀物アレルゲン / 食物アレルギー / イネ科雑草・牧草花粉症 |
研究実績の概要 |
本研究は、米とイネ科花粉に共通する潜在的アレルゲンについて、穀物アレルギーの発症原因としてこれらの潜在的アレルゲンが関与するかを明らかとすることを目的としている。これまで、潜在的アレルゲンの抗原性については、食物アレルギー患者の血清IgE抗体の反応性と、潜在的アレルゲンを抗原として実験動物に投与した際の応答性を解析することで評価してきた。当該年度においては、花粉抗原としての潜在的アレルゲンの抗原性を解析するために、イネが属するイネ科の雑草・牧草花粉症患者の血清を用いて、潜在的アレルゲンへの血清IgE抗体の反応性を解析することとした。 まず、イネおよび雑草・牧草花粉の可溶性タンパク質を抽出し、雑草・牧草花粉症患者血清によるIgE免疫ブロットを行った。その結果、多くの患者血清で反応性が見られるタンパク質や、多くはないが特定の患者血清においては強く反応性を示すタンパク質が存在した。反応性を示したいくつかのタンパク質は、いくつかの潜在的アレルゲンの分子量の理論値と一致するか、それに近いものであった。また、患者血清を用いて、潜在的アレルゲンの組み換えタンパク質に対する反応性を、IgE免疫ブロットおよびIgE ELISAによって解析した。その結果、やはり強い反応性を示すものと、特定の患者血清においては強く反応性を示すものがあった。これらの結果をまとめると、潜在的アレルゲンおよびイネ花粉への患者血清の反応性については、強い相関性がみられた。一方で、潜在的アレルゲンおよびイネ種子への患者血清との反応性については、そのような相関はみられなかった。この結果より、潜在的アレルゲンは食物アレルギーの原因抗原になる可能性は少ないが、花粉アレルギーを引き起こす抗原となりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネ科雑草・牧草花粉症患者の血清を用いた実験により、潜在的アレルゲンの抗原性の評価を予定通り行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果より、潜在的アレルゲンは花粉においては感作あるいは発症抗原となる可能性があるが、経口摂取においては免疫寛容を誘導する可能性がある。そこで、今後の研究においては、イネ種子(米)に存在する潜在的アレルゲンをはじめとした成分について、経口摂取することによる免疫系への影響を実験動物によって調べることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は実験に関わる物品および消耗品を追加購入する必要がなかったため、次年度使用額が生じた。次年度においては、実験のための物品と、これまでの結果をまとめて学会発表するための旅費や論文投稿にかかる費用として使用する予定である。
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