本研究は、米とイネ科花粉に共通する潜在的アレルゲンについて、穀物アレルギーの発症原因としてこれらの潜在的アレルゲンが関与するかを明らかとすることを目的としている。これまで、潜在的アレルゲンの抗原性については、食物アレルギー患者の血清IgE抗体の反応性と、潜在的アレルゲンを抗原として実験動物に投与した際の応答性を解析することで評価してきた。これまでに、花粉抗原としての潜在的アレルゲンの抗原性を解析するために、イネが属するイネ科の雑草・牧草花粉症患者の血清を用いて、潜在的アレルゲンへの血清IgE抗体の反応性を解析した。潜在的アレルゲンおよびイネ花粉への患者血清の反応性については、強い相関性がみられた。一方で、潜在的アレルゲンおよびイネ種子への患者血清との反応性については、そのような相関はみられなかった。この結果より、潜在的アレルゲンは食物アレルギーの原因抗原になる可能性は少ないが、花粉アレルギーを引き起こす抗原となりうることが示唆された。 2020年度においては、これらの潜在的アレルゲンと米の主要アレルゲンにおける、炊飯などの加熱調理や麹菌による発酵の影響を解析した。実際には、米と炊飯後の飯、米麹、そして甘酒中におけるタンパク質を電気泳動により分離し、これまでに作成した各種特異的抗体を用いて、潜在的アレルゲンの存在を免疫ブロットにより解析した。さらに、これらの研究成果をまとめて論文を作成、投稿した。
|