研究課題/領域番号 |
15K21481
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研究機関 | 名古屋学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 菜穂子 名古屋学院大学, リハビリテーション学部, 講師 (70581510)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 客観的評価 / ヒップホップダンス / 位相のずれ |
研究実績の概要 |
ヒップホップダンスは、小中学校の体育の授業に導入されている一方で、具体的な指導方法や評価する基準が明確に示されていない。同様に、競技として行われているヒップホップダンスにおいても、明確な評価基準は定義されていない。本研究課題では、ヒップホップダンスのステップ動作をバイオメカニクス的に詳細に分析して、熟練者の動作特性だけでなく、審査員の評価に影響を与える動作特性を見つけ出すことを目的としている。 当該年度においては、ヒップホップダンスの全身リズム動作に左右の動きを加えたステップ動作(サイドステップ)を課題とし、熟練者・未熟練者各8名の動作を、モーションキャプチャシステムを用いて測定した。モーションキャプチャシステムから得られたデータから、身体重心および頭頂部の変位、身体各部の関節角度、およびそれらの位相のずれを算出し、熟練者と未熟練者で比較した。次に、測定したデータからサイドステップ動作のスティックフィギュアアニメーションを作成し、熟練した審査員がアニメーションを見て、『上手い・下手』を10点満点で評価した。この評価結果と、算出した運動学的指標の関係を調査した。 その結果、熟練者には、下肢の関節角度と頸部の関節角度の位相に特徴的なずれが生じており、また身体重心と頭頂部の前後・左右方向の変位の位相にも同様のずれが生じていることが分かった。さらに審査員の評価は、これらの位相のずれから表出される顔の傾きの変化に最も影響を受けていることが分かった。 これらの動作特性は、審査員の評価を効率よく上げるための『コツ』と捉えることができ、さらには具体的な指導方法の開発や客観的な評価基準の開発のための基礎的な情報になる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、ヒップホップダンスのステップ動作の中から、全身リズム動作に左右または前後の動きを加えたステップ動作を分析し、熟練者の動作特性を抽出する計画であった。 研究実績の概要にも記載したが、平成27年度は当初の計画通り、全身リズム動作に左右の動きが加わったサイドステップ動作に着目し、熟練者の動作特性を抽出することができた。さらには、平成28年度に実施する計画であった、審査員の評価に影響を与える動作特性の抽出についても、一部前倒しして実施した。これらの内容については、研究論文を国際雑誌に投稿し、掲載が確定した状況であり、研究計画が順調に進展していると考えられる。 一方で、全身リズム動作に前後の動きを加えたステップ動作についても分析を進めていたが、明確な結果が出ていない状況である。ヒップホップダンスは複雑なステップ動作が多く、ステップ動作を分析可能な要素に分けることが難しい場合も多くあるため、今後は、サイドステップ動作の結果を、他の複雑なステップ動作に応用して考え、そこから予想できることについて検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に分析したステップ動作の運動学的指標と審査員の評価との関係を調査し、審査員の評価に影響を与える動作特性について検討する計画であった。 モーションキャプチャシステムデータから作成したスティックフィギュアアニメーションを用いた評価結果については、平成27年度にすでに実施した。平成28年度は、身体の一部のみを表示させたスティックフィギュアアニメーションや、実際の映像、もしくは実際の映像に近いアニメーションを作成して、審査員の評価に影響を与える因子について検討していく。 さらに、応募者が過去に実施した全身リズム動作に関する研究結果と、平成27年度の実施したサイドステップ動作の結果を他の複雑なステップ動作に当てはめて考え、他のステップ動作における、審査員の評価に影響を与える動作特性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、平成27年度中にモーションキャプチャシステムと同期できるビデオカメラ(VICON・Bonita DV)を購入し、平成28年度の研究実施計画にある、実際の映像を用いた評価の検討の準備を行う予定であった。しかし、データ処理の都合上、予定していた実際の映像を用いた評価よりも先に、モーションキャプチャシステムのデータからスティックフィギュアアニメーションを作成し、それを審査員が評価した採点結果の分析を進めたため、上記のビデオカメラの購入が遅れている状況である。当初の研究実施計画の内容が前後したことが理由であり、遂行状況が遅れているわけではない。
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次年度使用額の使用計画 |
購入が遅れているビデオカメラ(VICON・Bonita DV)を平成28年度に購入する計画である。
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