研究課題/領域番号 |
15K21482
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
中村 督 南山大学, 国際教養学部, 准教授 (50644316)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | フランス史 / フランス現代史 / フランス社会 / ジャーナリズム史 / メディア史 / 政治史 / 知識人 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦後フランスにおける知識人の変容をメディア史的観点から再検討することにある。当該研究3年目に当たる平成29年度(2018年度)は、いくつかの事例を基に知識人とメディアの関係の分析をおこない、新たに出てきた論点を整理した。また、同時に、文献および資料の収集・分析(資料調査)に取り組んだ。 研究実績の概要として以下を挙げることができる。第一に、「68年5月」(5月革命)を事例に、フランスの政治文化と記憶の問題を考察したうえで社会史的連続性を指摘した(「68年5月-ミシェル・ロカールと社会民主主義の発見」『思想』) 。また、歴史と記憶の関係を分析し、この出来事の歴史記述をめぐる問題についても分析した(「68年5月の神話化に関する一考察-記憶・歴史・世論をめぐって」(『「1968年」再訪-「時代の転換期」の解剖』 )。第二に、「知」を普及する側のプレス企業についての考察をおこなった。とくに「知識人の終焉」という言説が流布した1980年代以降を対象とした(「1980年代フランスにおけるメディア企業の変容―ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール社の危機に着目して― 」経営史学会)。第三に、国立文書館および国立図書館にて資料調査を遂行した。これまでと同様、戦後フランスの主要な出来事を取りあげて、今後につながる資料の収集に努めた。 そのほかの研究実績は来年度(以降)に公表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の進捗状況も課題の性格上、前年度までと同様、下記3つに大別することができる。すなわち(1)資料調査(文献および資料の収集・分析)、(2)国内外での意見交換、(3)研究成果の公表である。 (1)資料調査(文献および資料の収集・分析):本年度は、都合上、地方での資料収集を十分に進めることができなかった。当該研究の深化には、地方の文書館での資料収集も不可欠であり、この点は「やや遅れている」としてよい。 (2)国内外での意見交換:この点は、研究課題について、国内外を問わず多くの研究者と意見交換をすることができた。また、学会発表を通じて今後の指針に資する助言を得ることができ、結果、「おおむね順調に進展している」といってよい。 (3)研究成果の公表:当該研究課題の成果については、計画どおりには進まなかった。先行研究にもさまざまな進展があり、それらを理解していくのに時間がかかったことがその主たる原因である。いずれにせよ「やや遅れている」という判断になる。 このように、全体としては課題を残しているが、確実に進展しているのもたしかであり、「おおむね順調に進展している」という評価が妥当だと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策も下記3つに大別することができる。すなわち(1)資料調査(文献および資料の収集・分析)、(2)国内外での意見交換、(3)研究成果の公表である。 (1)資料調査(文献および資料の収集・分析):上述のように、平成29年度(2018年度)は地方の文書館での資料調査を十分に進めることができなかった。したがって、平成30年度(2019年度)は、可能なかぎり、さまざまな地方の文書館を訪問することでもって、研究の推進方策としたい。 (2)国内外での意見交換:この点は平成29年度(2018年度)と同様に、積極的に多くの研究者と意見交換する。 (3)研究成果の公表:これまでの蓄積した資料分析と論点整理をあわせて、多くの媒体で充実した研究成果を公表できるように努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は一次史料に基づく実証的な歴史研究を目指すもので、各種文書館にて広汎な資料調査を行う必要があった。しかし、子どもの養育によって、予定していたペースで遠方での資料調査を遂行することができなかったため。とくに地方の文書館訪問や文献資料の購入で使用する計画である。
|