本研究の目的は、戦後フランスにおける知識人の変容をメディア史的観点から再検討することにある。最終年度に当たる令和元年度(2019年度)は、当該研究の成果をまとめながら、新しい論点の抽出に努めた。また、補足的な文献および資料の収集・分析(資料調査)も行なった。 研究実績の概要として以下を挙げることができる。第一に、戦後フランスのジャーナリズムがどのように展開してきたのかを考察し、その歴史的特質を指摘した(「ジャーナリズム」『フランスと世界』、「ジャーナリズムとメディア」『はじめて学ぶフランスの歴史と文化』 )。また、当該研究がパリを中心に語られる傾向にあることを踏まえ、地方都市(レンヌ)における事例の分析にも着手した(「文明的粛清の可能性ー『ウエスト・エクレール』裁判の基礎的考察」、『近現代世界における文明化の作用』)。第二に、国立文書館および国立図書館にて資料調査を遂行した。2019年度は補足的な作業にとどめたが、大戦間期にまで遡って考察を進めるべきであることを示唆する資料を多く閲覧することができた。第三に、当該研究の遂行を通じて、戦後フランス社会に関する総論の執筆(「戦後フランスの政治と社会」『新しく学ぶフランス史』)や翻訳(クリスティン・ロス『もっと速く もっときれいにー脱植民地化とフランス文化の再編成』 、ピエール・ロザンヴァロン『良き統治ー大統領制化する民主主義』 )にも取り組んだ。 全体の成果については来年度以降に公表できるように努める予定である。
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