研究課題/領域番号 |
15K21483
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
洞澤 秀雄 南山大学, 法学部, 准教授 (60382462)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 都市計画 / 計画策定手続 / 計画争訟 / 計画裁量 / 住民参加 / イギリス法 / 都市法 / 行政法 |
研究実績の概要 |
研究初年度である2015年度には、日本の都市計画法における事前手続と事後手続についての文献を渉猟し、イギリスの都市農村計画法における事前手続と事後手続についての文献の調査を行った。また、自治体の都市計画担当者に事前手続の運用実態について話を伺った。 初年度であるため準備作業が中心となり、事前手続と事後手続の一体的把握という研究の中核にまでは至っていない。しかしながら、準備作業として事後手続である争訟手続についてはイギリスの議論を取りまとめた。その成果として、洞澤秀雄「都市計画・環境領域における行政争訟」比較法研究77号、洞澤秀雄「行政訴訟手続の変容:都市計画・環境領域を中心に」榊原秀訓編著『イギリス行政訴訟の価値と実態(仮)』(公刊未定)を執筆した。これらについては、イギリス行政法研究会において報告を行った(2016年1月24日)。 多少関連するテーマとして、事前手続をも含む都市計画法全般について、洞澤秀雄「都市計画法の規律密度と枠組み法化に関する一考察:イギリス都市農村計画法を参照して」南山法学39巻3・4号(2016年公刊予定)を執筆した。また、これついてもイギリス行政法研究会において報告を行った(2016年3月23日)。なお、洞澤秀雄「イギリス都市農村計画法における国による適正化担保:コールインなどの国による関与を中心に」『土地総研報告書(書名未定)』も執筆し、原稿を提出したが、公刊についてはまだ未定である。 以上のように、2015年度は準備作業として、事前手続と事後手続のそれぞれについて法制度の状況とそれを取り巻く課題や議論の整理を行った。これは、今後、事前手続と事後手続の一体的把握を理論的に検討をする際の基礎となる作業である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市計画の事前手続と事後手続に係る具体的な検討にまではまだ至っておらず、その準備作業として、事前手続と事後手続についてそれぞれ検討している段階である。とはいえ、事後手続についてはある程度取りまとめたものを執筆し(「都市計画・環境領域における行政争訟」、「行政訴訟手続の変容:都市計画・環境領域を中心に」)、事前手続についても関連した論稿を執筆し終えた(「都市計画法の規律密度と枠組み法化に関する一考察:イギリス都市農村計画法を参照して」)。研究会における報告も行った。 このように準備作業は順調に進捗している。それらを基礎に、事前手続と事後手続の両方の議論を接合する検討をこれから行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目である2016年度には、これまでの準備作業における事前手続と事後手続についてのそれぞれの検討を、理論的に接合する研究を行う。まずは、事後手続での裁判所の審理や判決が事前手続にどのような意義を持ちうるのかといった、事後手続の事前手続への影響について検討する。その後に、反対に、事前手続の周到さが裁判所での審理にどのような意義を持ちうるのかといった、事前手続の事後手続への影響について考察をする予定である。 理論面だけでなく、実務面からの検討をも行うために、今年度は日本での調査とともに、イギリスでの現地調査を予定している。計画策定手続に関わる自治体の計画官、国の計画審問庁の審問官へのインタビューを行い、イギリスにおける裁判所の審理や判決のもつ計画策定手続への影響(裁判所での計画取消判決の影響など)について伺う予定である。なお、2017年度にもイギリス調査を予定しているが、そこでは争訟手続に関わる裁判官またはその事務局にインタビュー調査をお願いし、計画策定手続のもつ裁判審理への影響について調査をし、また、行政争訟の研究者にも事前手続と争訟手続の理論的連関についてインタビュ―をする予定である。 このように、理論面と実務面の両面から、都市計画の事前手続と事後手続の一体的把握と連関の可能性について検討を行ってゆく。
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