研究課題/領域番号 |
15K21484
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
金谷 英俊 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 助教 (20513039)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 刺激-運動反応適合性 / 身体化された認知 / 温冷認知 |
研究実績の概要 |
提示される感覚刺激とそれに対して行う運動反応との間に生じる反応時間短縮等の,刺激-運動反応間の適合性を指標として,人間の認知情報処理における刺激入力と運動反応出力間の関係性について実験心理学的検討を行い,認知処理モデル構築を目指す。これまでの多くの適合性研究では,視覚刺激と対象の空間位置との間の関係性に焦点が置かれており,視覚以外の感覚入力や,ボタン押し以外の運動反応についてはそれほど検討が行われていないと考えられる。本研究課題では,運動反応として特に音声の発声を中心として,他の感覚モダリティおよび広範な運動反応における適合性の有無,そして適合性を生じさせている人間の認知情報処理を明らかにすることを目指すものである。 今年度は,提案研究である刺激入力と発声出力の適合性に関して検討を進めるとともに,前年度より継続して行っている,視覚的に提示する画像刺激の温かさ・冷たさと,運動反応出力を行う手の物理的な温かさ・冷たさとの間の適合性について系統的な検討を行った。その結果,直接的または心理的に温かさ・冷たさを示す視覚画像と,反応を行う手の物理的な温冷との間に適合性が生じることを見いだし,人間の温冷認知においても刺激入力-運動反応出力間で温冷についての情報が共有されている可能性についての示唆を得た。この温冷認知研究で得られた知見を,前年度に行った視覚刺激と手の握力との間の刺激-運動反応適合性の結果とも併せ,認知処理モデルの検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題である感覚刺激と音声発声出力の間の適合性の検討に関して,研究提案時に想定していた,実験参加者の発声データを時系列的に取得する装置を得ることが困難となり,実験実施の際により簡便な方法での反応取得を目指すこととなるなど,当該実験計画および内容の変更により実施に遅れが生じている。しかしそれと並行して,本研究課題の目的に適うように,実験計画のさらなる拡充として発声以外の刺激-運動反応適合性に関して広範な情報収集,実験計画の検討を行い,心理学実験を精力的に進めた。特に今年度は温冷認知や握力における適合性の検討に注力し,人間の認知処理モデル構築に向けた一定の成果を得たものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題である音声と運動反応出力の適合性に関して,発声反応取得としてより簡便な手法と装置による実験とすべく,実験計画の詳細な検討ならびに実験準備を進めているところである。これと並行して,初年度から実施している温冷認知に関する刺激と運動反応の適合性について,引き続き実験的検討を進めていき,得られた成果を随時,学会発表ならびに学術論文として公表していく。さらに,本研究課題の目的に沿う範囲で,その他の感覚モダリティや運動反応についての適合性についても検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の遂行によって得られた研究成果に関して,国際学会等の国際会議論文ならびに国外学術雑誌に投稿する学術論文の英文校閲代として確保していた額であり,論文の完成が遅れていることから今年度末において未使用となったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
現在,研究課題遂行によって得られた研究成果について,国際学会において発表ならびに学術論文として公表すべく精力的に成果をまとめているところであり,次年度使用額は,従来の目的である国際会議論文ならびに学術論文の英文校閲代に充てる予定である。
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