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2016 年度 実施状況報告書

自動運転のあるべき姿とは?―ドライバ負荷軽減と依存,システムダウン後の復元から

研究課題

研究課題/領域番号 15K21486
研究機関愛知工科大学

研究代表者

荒川 俊也  愛知工科大学, 工学部, 教授(移行) (50631248)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード自動運転 / 依存 / 生体計測 / システムの破綻 / 脳血流 / メンタルワークロード / 血圧 / 視線挙動
研究実績の概要

本研究では,自動運転に対する依存,および,自動運転システムが破綻した後のドライバーの認知・判断・技能の復元(ドライバーレジリエンスと称す)に関する検証を目的としている.
H27年度は,ドライビングシミュレータを用いて,若手ドライバーを対象として,ドライバー自らが操舵・加減速を行う運転(マニュアル運転)とレベル3か4を想定した自動運転における違いを調べ,自動運転に対する依存の発生を検証した.H28年度は,マニュアル運転,自動運転の後,自動運転のシステムが破綻したことを想定して,再度マニュアル運転を実施した際に,ドライバーの認知・判断の状態がどのような状態にあるかを,視線挙動,唾液アミラーゼ,脳活動,体圧分布,ドライバー顔表情(NEDOの評価法),血圧などの観点から評価した.その結果,システム破綻を想定したマニュアル運転における脳活動が自動運転時と似た状態であることがわかった.一方で,血圧の観点からは,システム破綻を想定したマニュアル運転では,血圧の増加が著しく,自動運転からマニュアル運転にハンドオーバーすることに伴うドライバーのメンタルワークロード増加の可能性が示唆された.
研究成果については,国際会議Measuring Behavior 2016,国際会議ICISIP2016において発表済であり,国内会議では自動車技術会中部支部や計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会2016において発表済である.なお,計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会では研究奨励賞を受賞した.これらに加えて,現在,論文を1件投稿中である.H29年度も成果発表を行う予定であると共に,論文を執筆中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H28年度は,H27年度の成果を反映して,自動運転システムが破綻した後のドライバー状態について,顔画像(NEDOの評価法),脳血流,血圧,視線挙動,体圧分布,唾液アミラーゼの観点から評価を行った.
ドライバーは1週間のうち3日間,ドライビングシミュレータ上で運転を行い,1週目はマニュアル運転,2週目はレベル3もしくは4を想定した自動運転,3週目はシステム破綻を想定したマニュアル運転を行った.走行環境は市街地を模擬した環境であり,1日あたりの運転時間は15分程度とした.その結果,システム破綻を想定したマニュアル運転時は,運転前に比べて運転後の唾液アミラーゼの量が比較的増加しており,また,最高血圧の増加も顕著であった.これは,自動運転の利便性に依存した結果,再度マニュアル運転を行うことに対するメンタルワークロードの増加に依るものと推察される.また,体圧分布の観点では,マニュアル運転時と自動運転時では逆の傾向を示しており,マニュアル運転時では運転初日の方が3日目に比べて分布が大きいが,自動運転の3日目では1日目と比べて分布が大きくなった.このことは,ドライバーの漫然化に起因すると示唆される.脳血流の観点では,左前頭葉のヘモグロビン濃度の時系列変化が,自動運転時の場合と,システム破綻を想定したマニュアル運転で同様の傾向を示していることが判明した.自動運転では,システムが認知・判断・操作を行い,ドライバーは運転時に認知や判断にリソースを割かなくても良い.しかし,この状況への慣れに伴い,再度ドライバーが運転を行う場合において,1週目のマニュアル運転と同程度の認知・判断のレベルが維持されず,寧ろ低下していることが示唆された.実験協力者の数が不十分であるため,今後人数を増加すると共に,車両挙動の観点からも評価を行っていく.

今後の研究の推進方策

H28年度の実験では,実験協力者数が6名と少なかった.また,ドライビングシミュレータのデータ(車両挙動に関するデータ:車速や操舵角など)が取得できていなかった.加えて,取得したデータにおいても,脳活動(脳血流)や血圧などにおいて,一部欠損データが生じていた.これは脳血流計や血圧計の通信エラーに起因するものである.H29年度の実験では,実験協力者数を更に増やすと共に,欠損データを極力抑えるように改善する.また,取得データの統計解析手法の検討を進める.
自動運転による運転期間とシステム破綻後のドライバー状態に関する関連性については未着手であるが,H29年度に可能な限り進めていく計画である.

次年度使用額が生じた理由

H28年度予算として当初計上していたドライビングシミュレータ用シナリオの改修を行わなかったこと,また,購入したポータブルNIRSが,計画時の製品より同等かつ安価な製品で賄えたことに起因して,次年度使用額が生じた.

次年度使用額の使用計画

研究成果発表(ICISIP2017など)および論文投稿に係る費用として使用する計画である.

  • 研究成果

    (30件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (3件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Driver Attention Based on Eye-movement and Time-series Analysis - Concept of Driver State Detection Devices,2017

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Arakawa
    • 雑誌名

      American Journal of Mechanical Engineering

      巻: Vol.5, No.1 ページ: pp.18-23

    • DOI

      10.12691/ajme-5-1-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Modeling of the Feeling of Visibility Reduction by the Right-A Pillar of a Japanese Vehicle and Evaluation of Visibility using the K-means Method2017

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Arakawa
    • 雑誌名

      ICIC Express Letters

      巻: Vol.11, No.3 ページ: pp.657-664

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ドライバモニタリングシステムの技術動向と展望2017

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 雑誌名

      愛知工科大学紀要

      巻: 第14巻 ページ: pp.55-61

  • [雑誌論文] Detection of Fatigue in Long-Distance Driving by Heart Rate Variability2016

    • 著者名/発表者名
      Ryosuke Sugie, Toshiya Arakawa, Kazuhiro Kozuka
    • 雑誌名

      ICIC Express Letters

      巻: Vol.10, No.7 ページ: 1553-1559

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 若年ドライバの高速道路走行時スマートフォン操作が及ぼす影響の検証2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 雑誌名

      産業応用工学会論文誌

      巻: Vol.4, No.2 ページ: pp.31-36

    • DOI

      10.12792/jjiiae.004.02.01

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 高校生向けPBL型教育を通じた自動車工学と予防安全技術への関心向上策2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 雑誌名

      工学教育

      巻: Vol.65, No.1 ページ: pp.94-99

    • DOI

      10.4307/jsee.65.1_94

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 最大電力供給の統計的解析と節電について - 東日本大震災がもたらした構造変化 -2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也, 土谷隆
    • 雑誌名

      オペレーションズ・リサーチ

      巻: Vol.61, No.10 ページ: pp.64-76

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Verification of Autonomous Vehicle Over-reliance2016

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Arakawa, Kunihiko Oi
    • 雑誌名

      Proceedings of Measuring Behavior 2016

      巻: 1 ページ: 177-182

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Consideration for Inhibiting Over-reliance of Autonomous Vehicle2016

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Arakawa
    • 雑誌名

      proceedings of ICISIP2016: The 4th International Conference of Intelligent Systems and Image Processing 2016

      巻: 1 ページ: 58-61

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 生体データを活用したドライバ状態検出・推定システムの現状 -パーティクルフィルタの適用に向けて2017

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      パーティクルフィルタ研究会(2017年3月)
    • 発表場所
      統計数理研究所(立川市)
    • 年月日
      2017-03-21 – 2017-03-22
  • [学会発表] 生体計測の主要技術と生体データ利用にむけた評価・解析のポイント2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      サイエンス&テクノロジー株式会社 技術セミナー
    • 発表場所
      東京流通センター
    • 年月日
      2016-12-21 – 2016-12-21
  • [学会発表] 自動運転に対する依存とシステム破綻時のヒューマンファクタ2016

    • 著者名/発表者名
      藤城孝彰, 荒川俊也
    • 学会等名
      計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会2016
    • 発表場所
      滋賀県立体育館
    • 年月日
      2016-12-06 – 2016-12-08
  • [学会発表] ドライバモニタリング技術の研究開発動向と展望 -自動運転の時代に向けて-2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      電気三学会関西支部専門講習会「人の内面状態理解のための生体情報センシング最新動向」
    • 発表場所
      中央電気倶楽部(大阪市)
    • 年月日
      2016-10-28 – 2016-10-28
    • 招待講演
  • [学会発表] 視線挙動に基づく自動運転時のヒューマンファクタ2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      生体医工学シンポジウム2016
    • 発表場所
      大雪クリスタルホール(旭川市)
    • 年月日
      2016-09-17 – 2016-09-18
  • [学会発表] 容積脈波法によるステアリング装着型連続血圧計の開発と評価2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也, 神永健多, 榊原規彰, 近藤針次
    • 学会等名
      産業応用工学会全国大会2016
    • 発表場所
      京都市国際交流会館
    • 年月日
      2016-09-11 – 2016-09-11
  • [学会発表] Consideration for Inhibiting Over-reliance of Autonomous Vehicle2016

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Arakawa
    • 学会等名
      ICISIP2016: The 4th International Conference of Intelligent Systems and Image Processing 2016
    • 発表場所
      Kyoto International Community House
    • 年月日
      2016-09-08 – 2016-09-10
    • 国際学会
  • [学会発表] 自動車技術の進展におけるドライバーモニタリングの役割と位置付け及びその技術動向2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      サイエンス&テクノロジー株式会社 技術セミナー
    • 発表場所
      AP品川アネックス
    • 年月日
      2016-07-25 – 2016-07-25
  • [学会発表] 生体計測の基礎と測定・解析ノウハウ2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      株式会社技術情報協会 技術セミナー
    • 発表場所
      株式会社技術情報協会
    • 年月日
      2016-07-19 – 2016-07-19
  • [学会発表] 隠れマルコフモデルによるマウス社会行動推定手法とフリーソフト"DuoMouse"の開発2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也, 田邉彰, 高橋阿貴, 柿原聡, 小出剛, 土谷隆
    • 学会等名
      パーティクルフィルタ研究会2016年6月度研究会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2016-06-30 – 2016-06-30
  • [学会発表] 自動運転への依存に関する実験的考察 - ヒューマンファクタの観点から -2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      自動車技術会中部支部2016年度支部通常総会併催研究発表会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2016-06-09 – 2016-06-09
  • [学会発表] 技術動向と応用事例から学ぶ生体計測のポイント~測定・解析のポイントと計測データの活用方法~2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      株式会社情報機構 技術セミナー
    • 発表場所
      品川区立総合区民会館
    • 年月日
      2016-06-06 – 2016-06-06
  • [学会発表] Verification of Autonomous Vehicle Over-reliance2016

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Arakawa, Kunihiko Oi
    • 学会等名
      Measuring Behavior 2016
    • 発表場所
      Radisson Blu Royal Hotel (Ireland)
    • 年月日
      2016-05-25 – 2016-05-27
    • 国際学会
  • [学会発表] ドライバー状態の検出・推定・制御技術の研究開発動向と展望2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      S&T出版株式会社 技術セミナー
    • 発表場所
      高橋ビルヂング
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-20
  • [学会発表] 自動運転の要素技術と国内外の研究動向および課題・問題点2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 学会等名
      株式会社テックデザイン 技術セミナー
    • 発表場所
      株式会社テックデザイン会議室
    • 年月日
      2016-04-22 – 2016-04-22
  • [図書] Automated Estimation of Mouse Social Behaviours Based on a Hidden Markov Model (in “Hidden Markov Models: Methods and Protocols”, chapter 14)2017

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Arakawa, Akira Tanave, Aki Takahashi, Satoshi Kakihara, Tsuyoshi Koide and Takashi Tsuchiya
    • 総ページ数
      12
    • 出版者
      Springer
  • [図書] 心拍・脈波計測を用いた各種評価(製品開発のための生体情報の計測手法と活用ノウハウ 第2章 第3節)2017

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      株式会社情報機構
  • [図書] 4週間でマスターする重回帰分析2016

    • 著者名/発表者名
      荒川俊也
    • 総ページ数
      70
    • 出版者
      株式会社テックデザイン
  • [備考] 愛知工科大学 荒川研究室ホームページ

    • URL

      http://www1.aut.ac.jp/~arakawa-lab/

  • [備考] 愛知工科大学広報誌 KOKA Times 第19号

    • URL

      http://www.aut.ac.jp/media/001/201704/newsletter19.pdf

  • [備考] 愛知工科大学ホームページ トピックス

    • URL

      http://www.aut.ac.jp/news/univ_news/entry-1731.html

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公開日: 2018-01-16  

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