研究課題
自動運転(AD)における依存および自動運転が破綻したことを想定し,ADからマニュアル運転(MD)に移行した際のヒューマンファクタについて,ドライビングシミュレータを用いて,自動運転レベル3以上を想定したシナリオを構築した上で,14名のドライバによる走行実験を実施し,評価を行った.最終年度はシステム破綻時のヒューマンファクタについて詳細に検証した.その結果,MD-AD-破綻を想定したMDというシナリオにおいて,破綻を想定したMDでは,脳血流(血中ヘモグロビン濃度)が,最初のMDおよびADに比べると著しく低下することが判明した.このことは,ADによりドライバ自身が認知・判断をする必要がないことや,ADに対する依存に起因し,MDに遷移しても,あたかも自動運転していると錯覚し,周辺環境に対する認知・判断能力が欠如していることが示唆される.また,市街地を15分程度走行するシナリオにおいて,MDを経験後,ADを1~3週間経験させ,その後MDを経験させたドライバについて,AD前後のMDにおける運転行動(車速,操舵角)を評価した.その結果,直進路においてはAD前後のMDで顕著な差は見られなかったが,ADを3週間経験したドライバについて,右左折において,AD前のMDに比べて,AD後のMDの方が,操舵角の絶対値が小さい傾向にあることがわかった.また,車速についても,ばらつきが顕著であることがわかった.このことは,ADを介在することによって,右左折時における車速や操舵角の感覚にズレが生じる可能性を示唆していると考えられる.研究機関全体の成果を纏めると,自動運転に対する依存が,視線挙動やブレーキ行動,NEDOの評価法に基づく覚醒度低下傾向から示唆されることが判明した.加えて,自動運転破綻時は,ADの介在による認知・判断機能の低下や,右左折時の車速や操舵角の感覚のズレなどが生じることが示唆された.
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