研究実績の概要 |
ショウジョウバエ分泌性シナプス間隙タンパク質Higは、発生過程において細胞外へ分泌後、脳内に拡散し特定のシナプス(コリン作動性シナプス)に局在化する。このとき、3種のα7様アセチルコリン受容体(Dα5, Dα6, Dα7)がHigのシナプス局在に関与することを明らかにした。さらにHigのシナプス局在を制御する新規シナプス間隙タンパク質を見出し、これをHaspと命名して2016年に論文発表した。HaspはHigと同様に分泌性シナプス間隙タンパク質であるが、Haspもまた発生過程において細胞外へ分泌後、脳内に拡散してコリン作動性シナプスに特異的に局在した。このため、Haspのシナプス局在を制御するさらなる因子が存在することが考えられた。そこで、LC-MS/MSでのショットガン解析により、Haspと相互作用する因子を探索した結果、複数の候補が得られた。このうちの一つの遺伝子について、機能喪失型突然変異体を作出したところ、変異体脳においてHaspのシナプス局在レベルが減少していることを見出した。このため、この新規因子がHaspのシナプス局在を制御している分子の一つであると考え、さらなる解析を進めている。また、Higと相互作用する3種のα7様アセチルコリン受容体(Dα5, Dα6, Dα7)について、ノックアウト系統と過剰発現系統の作出を行った。これらを用いた解析から、3種の受容体の中でも特にDα5サブユニットとHigは強く相互作用していることが明らかになってきた。以上の情報を元に、分泌性シナプス間隙タンパク質を介した受容体集積メカニズムの全容が今後明らかにされるだろう。
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