研究課題/領域番号 |
15K21497
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北場 育子 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (60631710)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 気候変動 / 地磁気エクスカーション / モンスーン / 銀河宇宙線 / スベンスマルク効果 / 年縞堆積物 / 水月湖 / 定量的気候復元 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中程度の地球の磁気シールドの弱化が気候変動に与える影響を探ることである。特にブレイクエクスカーション期に着目し、当時の気候変化を高時間分解能で明らかにすることを目指している。 1.昨年に引き続き、2014年に水月湖で掘削されたSG14コアを用いて、ブレイクエクスカーションが起こった最終間氷期(MIS 5)の始まりと終わりを含むMIS 6.2~4.2に相当する層準の花粉分析を行った。ブレイクエクスカーション期およびポスト・ブレイクエクスカーション期付近については、高時間分解能の分析を継続している。 2.昨年、グラスゴー大学に依頼していた阿蘇4テフラと阿多テフラに含まれる黒雲母を用いた40Ar-39Ar年代測定が完了した。阿多テフラの年代は、黒雲母のグレインごとのシグナルに一貫性が見られず、年代を決定するのが不可能であった。阿蘇4テフラに関しては、良好な年代値が得られた。 3.古気候復元精度向上のため、そのアナログとなる現生花粉データセットの拡充に努めている。2016年度は、北海道、福井~能登を中心に、約30km間隔で22点の表層花粉試料を採取した。同時に、各地点の植生調査も行った。現在、同試料の花粉分析を進めている。これまでの調査で、年平均気温14℃付近のギャップを埋めることができた。 4.本研究では、中程度の地磁気の弱化がモンスーンに与える影響を評価することも視野に入れている。そこで、どのような影響が及びうるかを、地球磁場が極めて弱くなった時期(地磁気逆転期)の気候変化から推定することを試みた。地磁気逆転期の花粉化石記録を再解析し、日本では夏よりも冬の気温低下量が大きいこと、夏モンスーンが弱まることを明らかにした。そして、このメカニズムとして、銀河宇宙線による雲生成が最も有力であることも実証的に示した。この成果は、Scientific Reportsに公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに得られた気候復元データのうち、天文学的要素で比較できない成分を他地域の古地磁気記録を比較した。しかしながら、年代の誤差が大きく、また、各地域での地磁気強度変化の傾向が異なるため、正しく両者の関連性を議論するのは、不可能であった。したがって、まずは、共同研究で進めている本研究と同じコアの古地磁気測定の結果と気候データを比較し、今後の方策を立てることにした。当初の計画とは多少異なっているが、ともに良好なデータが得られつつあり、目的は十分に達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
古地磁気測定に並行して、地磁気エクスカーション期を中心に花粉分析を行い、気候データの分解能を上げる。そして、地磁気強度と気候変動の関連について考察する。気候復元精度向上のための表層花粉データセットの拡充に関しては、特に大きなギャップとなっている新潟~静岡にかけて試料採取と分析を行う。本研究で集めた表層花粉データを、花粉化石を用いた定量的気候復元のためのフリーソフトのデータパッケージに加え、公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の配分予算のみでは当初の研究計画を達成することは不可能であったため、研究計画を見直した。
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次年度使用額の使用計画 |
花粉分析費用、表層花粉試料採取費用、学会発表費用に充てる。
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