研究課題
本研究では、中程度の地球の磁気シールドの弱化(地磁気エクスカーション)が気候におよぼす影響を探った。特にブレイクエクスカーション期に着目し、当時の気候変化を高時間分解能で明らかにした。1.昨年度に引き続き、2014年に水月湖で掘削されたSG14コアの花粉分析を行った。今年度は、特にブレイクエクスカーション期およびポスト・ブレイクエクスカーション期付近の高時間分解能化を図った。モダンアナログ法を用いて、花粉化石データから当時の気候変動を定量的に復元した。最終間氷期(MIS 5)の気温変化は、約2万年周期の振動を繰り返しながら、次第に減衰していった。つまり、当時の長期的な気候変化は、第一義的には、日射量によって天文学的に決まっていた。得られた気温変化から、軌道要素変化に起因する成分を取り除き、残渣成分を同じコアから得られた古地磁気強度の変化と比較した。神戸大学のグループによって、すでに古地磁気測定が終了している11万~13万年前においては、気温の残渣成分と地磁気強度に明瞭な正の相関が見られた。その一方で、モンスーン強度(冬季降水量)と地球磁場強度の明瞭な対応関係は見られなかった。2.古気候復元精度向上のため、そのアナログとなる現生花粉データセットの拡充にも努めた。2017年度は、新潟県を中心に、約30km間隔で22点の表層花粉試料を採取した。同時に、各地点の植生調査も行った。3年間で採取した表層花粉試料71点と、本プロジェクト開始以前に集めていた試料24点の花粉分析を完了した。このうち25点は、人間活動による植生攪乱の影響がきわめて大きい、もしくは周辺植生を反映していないため、アナログとしては不適切であった。集めた表層花粉データは、花粉化石を用いた定量的気候復元のためのフリーソフトのデータパッケージに加え、論文出版後に配布する。
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