高齢社会を迎えている今日において,歩行能力の維持・向上は寝たきりといったQOLの低下を予防するためにも重要な課題である.ウォーキングは日常的に手軽に行えるエクササイズとして人気があるが,歩行における定量的な評価項目は少なく,有効な評価基準とその伝達方法が必要であると考えられる. 人間はエネルギー効率の良い歩行速度を選択していることから,歩行速度と効率性は深く関係している.また,過去の研究から,歩行中の上下半身の重心運動から構成される重心二重倒立振子の角度が歩行速度に影響していることが分かっている.そのため,この重心二重倒立振子モデルから歩行速度と上下半身の運動に基づく定量的な歩行指標を求めることを目的としている. 本研究では,昨年度までに作成した複数の慣性センサによるウェアラブル計測システムの精度向上を目指し,2つのセンサの配置位置や人体を表す剛体リンクモデルの運動方程式を用いてセンサの計測値を組み合わせたフィルタリング機能を実装し,センサの計測値に含まれるノイズやドリフトの補正を行うためのシステムの改良を行った.また,歩行運動中,通常の歩行の様に重心が空間内を移動する場合と,ルームランナー上での歩行の様にその場にとどまる場合の歩行運動を比較し,歩行環境が異なる状況における上半身と下半身の協調関係を分析するために,光学式モーションキャプチャシステムを使用した同一被験者による平地とトレッドミル上での二足歩行計測実験を行った.快適歩行速度を基準とした複数の歩行速度に対して,通常の歩幅と大股の歩幅における歩行を計測し,二足歩行を行う状況が重心二重倒立振子モデルに与える影響を調査した.
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