研究課題/領域番号 |
15K21501
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松葉 涼子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (90555591)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 北斎 / 日本美術 / 古典籍 / デジタル・アーカイブ / 博物館 / 浮世絵 / 版本 |
研究実績の概要 |
本研究では国内外に所蔵されている北斎版本の古典籍のデジタル化をすすめながら、北斎版本のカタログ・レゾネ(総目録)をオンライン上で作成することによって、それぞれの作品の異版や後摺りなどの出版行程を明らかにすることを目的としている。四年間の研究期間では、特に北斎晩年に多く出版されている絵手本類を中心に整理し、北斎版本の総合的なカタログレゾネを作成することを目指す。 本年度は北斎版本の調査として、ベルギー王立美術歴史博物館(ベルギー)約110点、メイドストーン博物館(イギリス)約30点、国内個人コレクション10点のデジタル撮影を実施した。また、版本のカタログレゾネ作成に関連して大英博物館に所蔵されている北斎一枚摺のカタログレゾネ90冊のスキャニングをはじめており、3000作品のうち800点をデジタル化することができた。 特に1823年に出版された『今様櫛(キン)雛形』は明治の後刷が何例かあり、『万職図式』(もくしくは図考)と京都、大阪で工芸のデザイン帳として出版されていることがわかっていたが、ベルギー王立美術歴史博物館では初版の体裁であった横本ではなく、半紙本の形式で異版が作られている。また1860年代のパリのオークションでも『万職図式』の書名がカタログに見られており、北斎のデザインがブランド化しそのデザインを広める手段として版本が機能しており、またそれらが海外にも早くから流出していることがわかった。今後またさらにデジタル化をすすめて同デザインの版を細かく比較、分析することで、版本の体裁、版の違いから時代関係がさらに明らかになってくると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デジタル化の作業を一箇所につき2週間ごと集中的に実施し、順調にすすめることができた。それには各所蔵機関、コレクション所蔵者からの協力が得られたことが非常に大きい。また、大英博物館からはスタッフの協力を得て、関連する北斎一枚摺のスキャニング作業を予定通りすすめることができた。2-3月に代表者が日本に帰国することとなり博物館での作業をスタッフのみに任せることになってしまったが、11-1月の作業時間を増やすことで対処することができ、作業の遅れを未然に防ぐことができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のデジタル化作業によって、関連する資料の蓄積ができてきている中で、今年度は特にそれを効果的にオンラインで公開するためのシステムについての作業をすすめていきたい。また大英博物館ですすめている北斎一枚摺のオンライン化ともあわせてどのような機能が必要であるのかを討議していく予定である。また、北斎版本の序文からも当時の情報が読み取れることにあわせて、出版元の蔵版目録や、版元のリストなど、北斎版本の中身から具体的な内容が読み取れる。今後は特に学生、若手研究者と協力しあいながら中身を読んでいけるような研究会を実施していく予定である。
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