研究課題/領域番号 |
15K21503
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
井澤 友美 立命館大学, 国際関係学部, 助教 (50750428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バリ / 民主化 / アイデンティティ / アジェグ・バリ / ポストコロニアル / インドネシア / 地方分権化 |
研究実績の概要 |
2016年度は、バリ文化の保存・強化に向けた制度・運動を再考することを主な目的として研究を進めた。その過程で、特に民主化以後に浸透したバリ文化強化運動、すなわちアジェグ・バリ運動を再考することが鍵となったが、それをより深く理解するためには「バリのバリ化」やヒンドゥーの固定化および強化といったオランダ植民地時代の文化保全政策を踏まえて議論することが必要となった。そのために、世界最大級の東南アジアコレクションを誇るアメリカのコーネル大学図書館にて資料収集を行った。加えて、2000年代に浸透したアジェグ・バリ運動を理解するために、バリ州の最大メディア社であるパリ・ポスト・グループの図書館に保管されている新聞記事、タブロイド記事を収集した。その成果は、「復活する地方アイデンティティ:統合と分離ーインドネシア・バリ州におけるポピュリズムの考察」中谷義和他編『ポピュリズムのグローバル化を問う』法律文化社、2017年、223-241頁として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東南アジア研究で著名なコーネル大学のクロッチ図書館で資料収集ができたことも重要であるが、2016年度に研究対象としたバリの文化強化運動には、バリ・ポスト・グループが深く関与している。その傘下であるバリ・ポストおよびバリ・トラベル・ニュースが保管する貴重な記事や資料を拝見することができたこと、そしてその記者の方々に多様なご意見を賜わる機会を得られたことが成果につながった。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、国際観光地という多様な価値基準が重層的に存在するグローバル空間において、地元アクターが民主化後に開かれた政治・経済的アリーナへ参与する実態を検証する。バリの土着アクターが観光事業に関与を深めていく過程で露呈しつつある問題、すなわち(a)地元アクター間における暴力の存在、(b)「異文化」の衝突、の実態を浮き彫りにする。観光倫理論、エコツーリズム論、観光人類学などで比較的軽視されてきた地元アクターに起因する社会問題が、「文化保全」や「地域住民主体型観光」が備える「地元文化の正統性」とどのような関連性を持つのかを明らかにする。
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