本研究では、エナジーハーベスト技術の有効な活用方法の一つとして「尿発電を用いたウェアラブルなバッテリレス無線尿失禁センサシステム」を実現させ、実用化を目指すことを目的としている。本技術により得られる電力はとても小さく、有効に活用するためには、エネルギー収支のバランスがとれたシステムの構築が重要である。そこで我々は、尿失禁センサシステムの電源として、尿失禁時の排尿を利用した発電を用い、パワーマネジメント回路により、エネルギーの収穫と消費をコントロールした。本研究期間では、我々が構築してきたシステムを実用化可能な形へと発展させるために以下の内容を実施した。 まず、安全で使い捨て可能なおむつ一体型尿発電デバイスに用いる正極電極として活性炭電極や導電性高分子材料が有効であることを示し、特に、正極には活性炭電極を用いて負極であるアルミニウム電極とともにおむつの吸収材の下側に平行に配置することで発電量がおむつ内の尿量に応じて変化する特性を得た。 また、パワーマネジメント回路を低電圧から起動可能な回路構成とすることにより、尿発電デバイスの発電特性ばらつきに対する尿失禁センサの応答速度ばらつきを低減させたとともに、本回路を用いた尿失禁センサから間欠的に送信される無線信号の間隔が尿発電デバイスの発電量に依存することを確かめ、送信された無線信号の間隔から尿失禁が発生したタイミングと失禁量を検出する手法を確立した。 さらに、本センサを赤ちゃん用および介護用おむつに適用し、それぞれのおむつ構造や吸収特性に応じたおむつ取り替え時期検出手法を検討し、尿失禁の発生タイミングと失禁量からおむつ取り替え時期を自動で検知するシステムを構築し、使い捨てとなる尿発電デバイスと繰り返し使用の回路基板を接続するために必要な取り扱いが簡単なコネクタの試作も行い、実際の使用現場における意見収集を行える形へ近づけた。
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