研究課題/領域番号 |
15K21506
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
近藤 俊太郎 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00649030)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 親鸞論 / 親鸞像 / マルクス主義 / 反宗教運動 / 家永三郎 / 佐野学 / 近代仏教 / 皇道仏教 |
研究実績の概要 |
2015年度は、関係史料の調査・蒐集を進めながら、①家永三郎の親鸞論、②1930年代のマルクス主義者による反宗教運動と仏教との関係、③近代日本の戦争と仏教との関係、といった課題に取り組んだ。 ①については、日本宗教学会で「戦時下仏教思想史研究の一断面―家永三郎の親鸞論―」と題して研究発表をした。そこでは、家永三郎が『日本思想史に於ける否定の論理の発達』で提示した親鸞論を軸に議論を組み立てた。発表では、家永が「否定の論理」の歴史的意義を明確にしなかったために、彼の親鸞論が、戦時下では普賢大円に国体肯定の論拠として、戦後には佐野学に民主主義肯定の論拠として、それぞれ利用されたことを論じた。 ②については、「仏教と近代」研究会で「反宗教闘争と階級闘争―反宗教闘争同盟準備会を中心に―」と題して研究発表をし、1930年代のマルクス主義者による反宗教運動について考察した。また、「近代日本のマルクス主義と仏教(下)―反宗教運動をめぐって―」と題した論文を執筆し、反宗教運動に対する仏教界の応答の諸相を論じた。拙稿では、その応答に当時の仏教理解が反映していることを指摘したが、今後はその仏教理解がいかなる親鸞論を生み出していくことになるのかについて検討する必要がある。 ③については、小川原正道『日本の戦争と宗教―1899-1945―』(講談社、2014年)の書評を執筆した。また、新野和暢『皇道仏教と大陸布教―十五年戦争期の宗教と国家―』(社会評論社、2014年)を題材にして開催されたシンポジウムでのコメントを成稿した。いずれも近代日本の戦争と仏教との関係について考察を加えたものであるが、マルクス主義との関係で形成される親鸞論の歴史的背景として軽視しえない問題であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は、研究会・学会での研究発表の機会に恵まれ、また本研究課題に関する成果を論文化して発表できたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、反宗教運動および戦時下の家永三郎を中心に研究を進めた。そこでは、特に家永三郎の親鸞論を軸に、『日本思想史に於ける否定の論理の発達』とその受容史といった側面から接近し、研究を新たな方向に展開できた。ただし、明治末期から大正期にかけての親鸞論の展開と社会主義との関係という問題については、まだ研究を本格化できておらず、課題を残している。引き続き、関係史料の蒐集に努め、明治末期から大正期の親鸞論の展開についても何かしらの展望を得たい。同時に、2015年度の成果を踏まえるとき、戦後に、戦時下の親鸞論がどのように継承されていくのかも重要な課題となってくる。今後、戦後の親鸞論についても追求する予定である。 2016年度も、いくつかの研究会や学会での研究発表も予定しているので、そうした機会を活用しつつ、論文等の成果にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度末に刊行を予定した編著が、次年度に刊行を延期することになった。編著刊行に関連して生じる費用を想定し、今年度の予算消化を抑制した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の編著刊行に関連して生じる経費として使用する。
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