報告者は、近代日本における親鸞論の変遷を、特にマルクス主義との関係を軸にして解明することを課題として研究を進めた。その結果、以下の点をあきらかにした。 初期水平運動ではマルクス主義との思想的親和性のもとに親鸞像が形成され、それが解放運動の精神的機動力となった。反宗教運動段階になると、親鸞思想は宗教=阿片論に解消され、支配階級に奉仕するイデオロギーと位置づけられた。親鸞はまた、宗教的転向の文脈で、天皇制国家への従属を引き出す根拠として読み込まれた。戦後になると、そうした親鸞理解を反転させ、親鸞を媒介して戦前の天皇制国家への批判的立場を構築する者が現れた。
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