本研究の目的は、開発途上国におけるジェンダーと開発の関係性について、H25-26 年度の若手研究(B)「開発途上国におけるジェンダー格差が母子の健康に与える影響」を発展させる形で、実験・行動経済学的に解明することである。ジェンダー平等は、国連「持続可能な開発目標(SDGs)」ゴール5にあるように、それ自体が開発目的である一方、人的資本(健康と教育)蓄積にも好ましい影響を与えると考えられている。とりわけ、家庭内の女性のエンパワーメントは、世帯員の行動様式・資源配分・厚生に重大な影響を与えうるため、政策的にも重要なテーマである一方、途上国における実証的エビデンスは未だ希少である。こうした背景に鑑みて、本研究の成果としては、第一に、ラオスのビエンチャン市郊外の農村部において独自に収集した世帯調査データを用いて、ジェンダーと健康との関連について実証的に明らかにしたことである。例として、従属変数に子どもや親の健康アウトカムを、説明変数に女性のエンパワーメントの多次元的指標を用いて回帰分析を行なった結果、両者の間に統計的に有意な関係性が確認された。第二に、ラオス農村部の小学校にてラボ型のランダム化比較試験を行い、小学生の男女間での協力意識がグループ・パフォーマンスに与える因果的効果を明らかにした。第三として、ラオス農村部の夫婦の社会的選好とそのジェンダー差が世帯員の健康・教育アウトカムに与える因果的効果について明らかにした。最後に、上記の結果を用いて、途上国における子どもの人的資本形成や家族の厚生に好ましい帰結をもたらす、ジェンダーの観点からの政策介入案を提示した。
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