研究課題/領域番号 |
15K21511
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
水谷 泰治 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (10411414)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 並列処理 / 教育工学 / プログラミング / エミュレータ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,並列プログラムの書き方を抽象化し,並列プログラミングの本質の学習に適した教育向け並列プログラミング言語とその処理系を開発することである. 平成28年度は,前年度に開発した教育向け並列プログラミング言語の処理系において,(1)並列実行時の見かけ上の速度向上率を増加させる手法,および,(2)プロセス間通信の可視化と性能測定を支援する機能を提案した.いずれもPCクラスタ上で並列実行を行う場合の機能である. (1)については,PCクラスタに搭載されているCPUコア数をPc,最大使用プロセス数をPmaxとしたとき,使用プロセス数をP(Pc以上Pmax以下)としたときの速度向上率を見かけ上P倍に近い値にする機能である.この機能は,Linuxのcgroupsを用い,Pc, Pmax,およびPの値に応じて各プロセスのCPU使用率を制限することで実現した.この機能により,並列プログラミングの初学者は,実環境から得られる速度向上よりも大きい速度向上を体感することが可能となり,学習意欲の向上につなげられると期待できる. (2)については,処理系が並列プログラムをコンパイルする際に,通信履歴を生成するように並列プログラムを修正し,実行後にその履歴を元に通信状況を可視化する.また,並列プログラム中に特殊なコメントを記入することで,実行時間の測定を半自動的に行う.初学者にとって通信状況の理解難しく,実行時間の測定は煩わしいものである.本機能により,並列プログラミングの学習を効率良く行うことが可能になると期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標通り実環境よりも大きい規模の環境での並列実行を実現できたため,順調に進展しているといえる. なお,当初の計画では平成28年度は単一のPC上で並列処理を行う処理系の開発する予定であったが,実装が容易と判断したため,平成27年度に開発した簡易的なエミュレータ上に実装した.当初の計画と異なるものであるが,実環境よりも大きい環境上で並列実行を行うという点に変わりはなく,本研究の目的から外れるものではない.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に開発した処理系を拡張する形で実際の並列計算環境上で動作する処理系を開発する.現在までに開発した処理系は,PCクラスタとマルチコアCPUを対象としたものであり,GPUへの対応はできていない.平成29年度はGPU上での並列実行を可能とする処理系を拡張する. 当初の計画ではオブジェクト指向の考え方に基づいて実環境の詳細を隠蔽したライブラリを開発する予定であったが,これまでに開発した教育向け並列プログラミング言語自体が実環境の詳細を隠蔽できていると考えられるため,オブジェクト指向に基づいたライブラリの開発は見送り,これまでに開発した処理系を拡張する形で実装を進める予定である. また,前年度までに開発した教育用並列プログラミング言語およびその処理系の評価を行う.具体的には,並列プログラミングの初学者に使用してもらい,効率良く学習できたか否かをアンケート等によって評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本学の旅費支払の制度上,年度末(3/22-3/25)の出張に関する旅費支払が平成28年度中に完了せず,次年度の予算から支払われることになったため,残額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度末の出張旅費の支払いに使用される. 実験環境のための機材の購入,および研究成果の発表のための旅費に使用する.
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