本研究は、インフルエンザ流行時に水環境中より検出される抗インフルエンザウイルス薬に着目し、関連ウイルスの探索を同時に行いこれらに関する知見を得ることを目的としており、平成30年度においては以下の成果が得られた。 1、河川水中インフルエンザウイルスの継続的探索 確立したウイルスの高感度測定法を用いたインフルエンザウイルスの探索を実施した。昨年度までに得られた知見より河川水の前処理法として「凍結乾燥処理」と「捕捉濃縮精製法」の2段階濃縮を行い、濃縮率を高めた。インフルエンザ流行時において1週ごとに採水した試料4点中、H3亜型が1点、H1N1pdm09亜型が3点検出された。これらはごく微量であり環境への影響はないと考えられる。また、これらの検出は大阪府感染症情報センターが公表しているインフルエンザウイルス検出数のデータと一致しており、これらのウイルスがヒト由来であることは間違いがない。下水道普及率が100%に近い都市部においてこれらのウイルスが検出されるのは、下水配管のミス等により、少量の下水が河川に直接流入している可能性が高いと考える。 2、モニタリングによる水環境中濃度の把握 国立感染症研究所は2017/18年シーズンにおいて全国で過去最多のインフルエンザ患者が発生したと報告した。大阪府においても2017/18年シーズンにおけるインフルエンザ流行指数は最高の45を記録したが2018/19年シーズンはさらにそれを上回り48を記録した。これに伴い、河川水中における抗インフルエンザウイルス薬の濃度も非常に高く、2017/18年、2018/19年シーズンともに高濃度で検出された。これら抗インフルエンザウイルス薬による毒性等の直接的な影響がないと考えるが、ウイルスへの耐性リスクが懸念されるため、継続的なモニタリングの重要性が明らかとなった。
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