研究実績の概要 |
本研究の目的は、新規癌治療構築のための基礎研究として、マイクロ波の非熱照射が誘導する癌細胞死をより精密に解析することである。本年度はまず、マイクロ波非熱照射が各種培養細胞の生存率に与える影響について調べた。周波数2.45 GHzのマイクロ波を、培養細胞の温度が37°Cに維持されるよう非熱照射した。8種類の培養細胞(HL-60, MFC-7, MDA-MB-231, MCF-12A, Panc-1, T98G, KATO III, HGC-27)にて検討した結果、正常ヒト乳腺上皮細胞株MCF-12Aを除く7種類がマイクロ波照射により死滅した。 次に、これらの培養細胞の誘電特性を調べるため、ネットワークアナライザーを用いて細胞のε’及びε’’を測定し、tanδを算出した。その結果、2.45 GHzにおいては細胞間の誘電特性に有意な差が確認されなかった。つまり、マイクロ波エネルギーの吸収能は、細胞間に有意な違いが見られないことが示唆された。 また、8種類の培養細胞の中で最も生存率が低下したヒト骨髄性白血病由来HL-60細胞に対して、照射条件(照射時間・出力)を変動させてマイクロ波を照射し、生存率を確認した。更に、ジュール熱との相関を調べた。その結果、総ジュール熱に相関して生存率の低下が見られた。 加えて、マイクロ波非熱照射と抗癌剤との併用効果について検討した。HL-60に3種類の抗癌剤(Cytarabine, Camptothecin, Etoposide)をそれぞれ添加して検討を行ったところ、非熱照射による併用効果の増大は確認できなかった。 更に、本研究に使用しているマイクロ波照射装置の電磁界強度をCOMSOL Multiphysicsを用いてシミュレーション解析した。 尚、本研究成果の一部は、京都大学生存圏研究所の全国国際共同利用「先進素材開発解析システム」を利用した。
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