研究課題/領域番号 |
15K21516
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
浅野 麻実子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (20582133)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロ波 / アポトーシス / 癌細胞死 |
研究実績の概要 |
本年度は、ヒト骨髄性白血病由来HL-60細胞にマイクロ波を非熱照射した際の細胞死メカニズムに関して、更なる解析を行った。具体的にはHL-60細胞に対して、カスパーゼ8阻害剤であるZ-IETD-FMK及び、カスパーゼ1~9阻害剤である Z-IETD-FMK、receptor-interacting protein 1 (RIP1)キナーゼの阻害剤であるNecrostatin-1をそれぞれ処理後、マイクロ波照射を行い、細胞生存率の確認を行った。その結果、いずれの処理でも細胞生存率が回復した。また、それぞれの処理での細胞生存率の上昇割合は同程度であり、互いに有意な差はなかった。これまでの知見から、本アポトーシスではカスパーゼ3、7及び9の活性上昇は見られず、カスパーゼ8のみ活性上昇が確認されている。以上から、カスパーゼ8の活性上昇が細胞の生存に大きく影響を与えることがわかった。また過去の知見より、マイクロ波照射群ではRIP1の発現変動が確認されなかったが、Necrostatin-1処理にて細胞生存率が上昇した。Necrostatin-1は、AIFがサイトゾルから核へ移行するのを阻害することが知られている。以上から、Necrostatin-1処理によりAIFの核移行が阻害され、結果としてカスパーゼ非依存的アポトーシスが抑制されたと推測した。 また、ヒトグリア芽細胞腫由来T98G細胞、ヒト乳腺癌由来MDA-MB-231細胞及びヒト胃癌由来KATO III細胞にマイクロ波を非熱照射し、Annexin-V及びpropidium iodide(PI)による解析を行った。その結果、いずれの細胞においても両方の蛍光が確認され、アポトーシスが確認された。一方で、カスパーゼ3及び7の活性上昇は確認されず、これらが本アポトーシスに関与していないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、in vivo用マイクロ波照射装置の開発を完了し、それを担癌モデルマウスによる実験に適用する予定であった。しかし本年度内に本装置の開発を行うことができなかった。そのため、期間を延長して本研究を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vivo用マイクロ波照射装置の開発を完了する。更に、本装置をin vivoに適用した際の電磁界強度シミュレーション解析を併せて行う。その後、担癌モデルマウス内の腫瘍にマイクロ波照射を行い、腫瘍サイズの確認や形態学的観察、生化学的解析等を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に完了できなかったin vivo用マイクロ波照射装置の開発や、本装置のin vivoでの電磁界強度シミュレーション解析、担癌モデルマウスを用いた検討のための経費として使用する。また、論文執筆の投稿料としても使用予定である。
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