研究課題/領域番号 |
15K21518
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
守谷 順 関西大学, 社会学部, 准教授 (70707562)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不安 / 社交不安 / イメージ / 鮮明度 / 視覚的注意 / 記憶 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本年度は2つの研究を進めた。1つは社交不安とイメージの鮮明度との関連性,および両者が注意機能に与える影響について検討した。社交不安とイメージの鮮明度を測定する尺度を93名の大学生に実施した結果,両者には有意な相関は見られず,関連性は薄いと言える。しかし両者の交互作用が注意機能に影響を与えることが分かった。注意課題では,参加者に単語を1つ覚えてもらいながら,続いて一瞬提示される4つの単語にできるだけ多く注意を向け記憶するように指示した。4つの単語の中には,記憶している単語と関連の強い言葉(「元気」に対して「挨拶」など)が含まれ,人は記憶した内容と関連の強い刺激に注意を向けやすいことが知られている。本研究の結果から,社交不安が強い人の中でもよりイメージを鮮明に思い浮かべる人ほど,関連の強い言葉に注意を向けていることが分かった。つまり,社交不安が強くイメージが鮮明なほど,記憶が鮮明になり,より記憶と関連の強い情報を取得しやすいと考えられる。今回は感情をともなわない単語を用いたが,社交不安者が抱える悩みに近い否定的な記憶でも同様の結果が得られるか検討する。 もう1つは,来年度に実施する不安者が抱く顔イメージの可視化実験のため,顔イメージの操作に関する予備実験を行った。参加者にはノイズを重ねた2種類のアジア人の写真を提示し,どちらの顔がより中国人的か日本人的か,各国の人を想像してもらいながら選んでもらった。79名の大学生が参加し,選んだ写真をもとに各自が抱く中国人,日本人の顔イメージを可視化した。さらに可視化したイメージを他の206名に評価してもらったところ,中国人の顔イメージはより中国人的に,日本人の顔イメージはより日本人的に評価され,顔イメージの可視化は成功したと言える。来年度はこの手法を用い,不安者が他者に抱く顔イメージを可視化し,他者に否定的な印象を抱いているか明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施を予定していた研究「不安者が抱く視覚的イメージの具体化」について,尺度を用いて検討することができた。本年度はもう1つ,不安者が抱く他者の顔イメージの可視化の実験を実施する予定であったが,予備実験を実施するにとどまった。しかしながら,予備実験は成功しスムーズに来年度の本実験に移れること,また来年度実施予定であった視覚的イメージと注意との関連について一部検討することができた点を考慮し,おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の予備実験で成功した顔イメージの可視化の手法を用い,今後は不安者,特に他者からの否定的な評価を恐れる社交不安者が他者に抱く顔イメージを可視化する。また,本年度一部実施した視覚的イメージと注意との関連について,より基礎的な側面と応用的な側面に分けて詳細に検討する。本年度は言語刺激を用いて注意との関連を調べたが,今後は基礎的な側面として意味をともなわない図形を用いてイメージが注意に及ぼす影響を調べ,また応用的な側面として顔をイメージすることで注意に及ぼす影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として使用を考えていたもののうち,実験に使用する複数台のノートパソコンは大学内にあるもので賄えたため,必要がなくなった。また顔刺激作成ソフトウェア(Facegen)は来年度に使用予定であるため,本年度は購入しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
顔刺激作成ソフトウェア(Facegen)を購入する。他はおおむね申請書に記載の通りである。ただし,タブレットが大学内にあるもので賄えるようであれば,実験謝金およびネット調査の費用として使用する予定である。
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