研究課題
本年度は,イメージ操作による注意誘導の研究(研究1)と,不安者の自己顔に対する心的イメージの可視化の研究(研究2)を実施した。研究1では3種類の実験を実施し,イメージした対象へと注意が誘導されるか検討した。色名(赤など)からその色をイメージすると,その後の視覚探索課題でイメージと合致した色へと注意が向くこと,この注意誘導は刺激数が多い探索課題でも働くことが明らかとなった。さらに刺激を変え,顔写真をパソコン画面上に提示,参加者にはその人物の怒り顔または笑顔をイメージするよう求めた。怒り顔をイメージした際,その後の視覚探索課題で怒った表情へと注意が誘導されやすい可能性が示された。一連の研究により,イメージによる注意誘導は見られたが,ワーキングメモリによる注意誘導よりも効果は弱い可能性が考えられる。そこでイメージを想起し,かつワーキングメモリを保持した際にどちらに注意が誘導されるか検討した。実験では画面上にガボールパッチを提示し,その傾きをワーキングメモリに保持しつつイメージ上で回転するように指示した。イメージ後,視覚探索課題を実施。結果,個人差の影響が見られ,回転したガボールパッチをイメージできた群ではイメージと合致した刺激へと注意が誘導される一方で,正確にイメージできなかった群ではワーキングメモリと合致した刺激へと注意が誘導される可能性が示された。したがって,イメージによる注意誘導には個人のイメージ能力を十分に加味する必要性が考えられる。研究2では,参加者自身の顔写真にノイズを加えた写真を2つ提示し,より自分の顔に近い写真を選んでもらった。選んだ写真をもとに自分自身の顔イメージを可視化し,本人に顔印象の評定を求めた。結果,不安傾向が高いほど顔イメージの社会的望ましさを低く評定する可能性が示された。つまり,不安が高いほど自己像をネガティブにイメージしている可能性が考えられる。
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Attention, Perception, & Psychophysics
巻: 印刷中 ページ: -
10.3758/s13414-018-1520-0
Frontiers in Psychology
巻: 8 ページ: -
10.3389/fpsyg.2017.02323