本研究は,心拍や呼吸のタイミングと感情知覚の関連を調べた。成果の一つとして,他者の表情は,心臓が収縮した瞬間に見るほうが,心臓が拡張している時よりも,感情のポジティブ・ネガティブさが明確に感じられること,および息を吸っている瞬間の方が,吐いているときよりも表情のポジティブさを明確に感じられることを示唆した。 また,呼吸の吸う・吐くという活動に合わせて脳波が変動している様子を調べ,高周波ガンマ帯域の呼吸性変動の大きさが,個人の自律神経系の健全さや,呼吸の正確な知覚力と逆相関していることを示唆した。 これらの知見は,心と体の関連について,生理的・認知科学的に検討する新しいアプローチを拓くものと言える。
|