研究実績の概要 |
概日リズム研究のモデル生物であるシアノバクテリアでは、遺伝学的解析から概日時計を構成する三つの必須時計遺伝子kaiA, kaiB, kaiCが同定されている。さらに、3つの時計蛋白質KaiA,KaiB,KaiCの混合により、in vitroで概日振動が再構築され、この化学的振動が時計の中核であることが示されている。しかし、細胞分裂や代謝などを伴う細胞内での正確な24時間振動の維持機構は明らかでない。細胞内でKaiC量は概日振動し、KaiA,KaiBを含む巨大複合体を形成する。この複合体サイズは時間依存的に変化し、複合体サイズから未知の因子を含む事が示唆されている。本研究で、時間依存的な構成因子とそれに伴う機能変化を明らかにする事を目的にしてKaiC複合体のプロテオーム解析を行なった。 これまでに、主観的昼と主観的夜のKaiC複合体にそれぞれ含まれる蛋白質の候補をLC―MS/MSを用いた質量分析により検出した。また、転写活性における複合体の役割を明らかにするため、転写活性がほとんどない連続暗条件下でもKaiC複合体の構成因子の概日変化についての比較解析も行った。KaiCに結合するいくつかの候補因子が得られたが、顕著に時間特異性を示す因子は得られなかった。既に長周期化することがわかっているプロテアーゼClpP1もKaiC複合体の構成因子の候補として得られた。候補因子のタンパク質とKaiCとの直接的な結合を確認するためin vitro免疫沈降を行った。さらに、破壊株、過剰発現株の概日リズムへの影響を調べた結果、trigger factor, SecAなどのタンパク質の品質や輸送に関わる因子、走化性に関わる因子などでリズム周期や位相への影響があった。
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