研究実績の概要 |
非小細胞肺癌に於いて、EGFR、ALK, ROS1, RET, NTRK1等の幾つものドライバー遺伝子が同定されているが、現在、保険償還のあるEGFR, ALK遺伝子は、「1遺伝子異常1診断薬」が原則であるため、気管支鏡検査等の微量な組織で、変異頻度の高い遺伝子から順次検査する必要に迫らており、複数の遺伝子異常を同時に測定可能なマルチ診断薬の開発、承認が求められている。日本に於いては保険償還のある次世代シーケンサー用遺伝子パネルは存在せず、各医療機関が研究として実施しているのが実情である。近畿大学では、2013年より肺癌で活性型遺伝子変異が同定されている遺伝子及びALK, RET, ROS1, NTRK1融合遺伝子の全てのバリアントを網羅するThermo Fisher社の次世代シーケンサー用遺伝子パネルを用いたクリニカルシーケンスを無償で実施しており(UMIN000014782)、解析結果に基づく未承認薬も含めた分子標的治療薬の導入を目指している。2013年7月~2015年3月に近畿大学で診断された肺癌110例を前向きに解析した結果、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍検体からDNA, RNA抽出後遺伝子変異解析実施例は、それぞれ95%、96%と高率で実施可能であった。少なくとも1つ以上のアミノ酸置換を生じる遺伝子変異は69%の症例に認められ、薬剤感受性に関与するActionable遺伝子変異は40%に同定され、Actionable遺伝子変異有り且つ分子標的薬導入群は、変異無し群、及び、Actionable遺伝子遺伝子変異有り且つ分子標的薬導入無し群と比較し、有意に全生存期間を延長することを示し(Takeda M, et al. Annals of oncology,26: 2477-82,2015)、マルチ遺伝子パネルの臨床的有用性を示すことができた。
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