EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者の血漿34検体をdigital PCR法を用いてexon20 T790M耐性遺伝子変異、活性化遺伝子変異 (exon19とexon21)を測定した。13例はEGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療前後のペア検体であった。すべての検体においてexon19 deletionもしくはexon21 L858Rの変異検出が確認された。T790M耐性変異陽性は事前に検討した変異アレル頻度0.015%以上を陽性と定義した。ペア検体13例中、治療開始前の検体で陽性は1例のみで、EGFR-TKI耐性後の検体では10例で陽性が確認され(76%)、高感度アッセイによる高い検出率が得られた。遺伝子変異のタイプ別による陽性率では、L858Rを認める症例は25%、deletionを認める症例は48%で、既存の報告と同様の傾向であった。digital PCR法を用いた非侵襲的な血漿中の腫瘍由来DNAからの体細胞遺伝子変異検出の実行可能性が立証でき、肺がんの実地臨床に貢献できると可能性があると判断できる結果であった。今後は検証をさらに重ねて、コンパニオン診断として活用できるかどうかが重要である。今回、EGFR-TKI耐性後の検体においてT790M耐性変異が検出されなかった症例は、T790M変異以外の他の耐性機序が考えられるため、今後残余検体を用いてNGS解析を行う事を検討している。高感度アッセイによりT790M耐性変異の高い検出率が得られたが、偽陽性の影響によるものかどうかについてT790M変異に対する耐性克服薬であるオシメルチニブの効果との関連を検討したり、オシメルチニブのコンパニオン診断となっているコバスv2.0測定キットによる測定結果と比較する必要がある。血清検体からの測定、および腫瘍組織検体と同等の検出結果が得られ、計画していた研究成果が得られた。
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