研究課題/領域番号 |
15K21529
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研究機関 | 大阪人間科学大学 |
研究代表者 |
山崎 康一郎 大阪人間科学大学, 人間科学部, 講師 (30635868)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 性暴力加害 / 知的障害 / 心理教育 |
研究実績の概要 |
研究は地域生活支援研究会及、反社会的行動を伴う障がい者の支援研究会および性問題行動へのアプローチ研修会の3つの研究会の協力を得て遂行した。 性加害行為のあった知的障害者への介入について、日本で実践されている心理教育プログラムやSOTSEC-IDモデルなどの海外の取り組みを参照し、リラプスプリベンション・モデルやグッドライブズ・モデルによる介入プロセスについて検討した。そして、介入の概要についてまとめ、性問題行動のある知的障害者とかかわりのある支援者を対象とした研修会を開催して提示した。また、当研修の前後で質問紙調査を行った。質問紙調査内容は性加害行為の要因や支援方針についての支援者の見立てについてであった。 性加害行為のある、またはあった知的障害者への支援の展開過程について、2014年度に行ったインタビュー調査によって得られたデータに対して、上述のリラプスプリベンション・モデルやグッドライブズ・モデルによる介入を参照して考察を行い、日本司法福祉学会第16回大会および日本社会福祉学会第63回秋季大会にて発表するとともに、「龍谷大学 矯正・保護総合センタ―研究年報第5号」に論文を発表した。 また、2013年度に実施した性加害行為のある知的障害者への支援に関するアンケート調査結果について、地域生活支援研究会において、リラプスプリベンション・モデルおよびグッドライブズ・モデルの視点から再度考察を行った。この結果については、司法福祉学研究第16号へ論文投稿を行った。 さらに、調査研究においては、障害福祉サービスの支援者を対象として、郵送による質問紙法を用いて調査を実施した。研究協力者は障害福祉事業所の支援者であり、得られた回答を集計した。結果の解釈については3つの研究会の中で議論を行い、日本司法福祉学会第17回大会、日本社会福祉学会第64回秋季大会にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、研究当初の予定通り、地域生活支援研究会、反社会的行動を伴う障がい者の支援研究会および性問題行動へのアプローチ研修会の協力を得て2つの質問紙調査を行った。そのため概ね順調に進展していると考えている。一方で、性加害行為に対する心理教育プログラムの作成については、性加害行為の背景要因や動機について明らかにすることがまず必要とされたため、平成29年度にかけてインタビュー調査を実施する予定であり、支援者を対象としたインタビュー調査に現在取り組んでいるところである。調査研究の進捗状況は具体的には以下のようになる。 まず、障害福祉サービスの支援者を対象として、郵送による質問紙法を用いて調査を実施した。調査内容は、非行・犯罪行為に対する認識、性加害行為に対する認識、研修の機会、支援上のニーズであった。研究協力者は障害福祉事業所の支援者であり、得られた回答を集計した。その結果については、現在、統計的な分析を行っている。 次に、性問題行動のある知的障害者とかかわりのある支援者を対象とした研修会を開催し、研修の前後で質問紙調査を行った。研修内容は、性加害行為に対する心理教育の概要説明と性加害行為の動機やプロセスについての提示であった。質問紙調査の内容は性加害行為の要因や支援方針の見立てについてであった。また、当研修会でインタビュー調査の研究協力者を募集した。回収した質問紙を集計し、分析を行い、その結果をもとにインタビュー調査のインタビューガイドを作成した。 そして、現在、支援者を対象としたインタビュー調査を行っている。インタビュー調査の内容は、支援対象者による性加害行為の内容、その性加害行為に至る背景要因や動機について、支援を通じての支援者の意識の変化についてである。得られたデータは文書化した後、修正版グラウンデッドセオリーアプローチによって分析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施した質問紙調査の結果の分析を地域生活支援研究会、反社会的行動を伴う障がい者の支援研究会および性問題行動へのアプローチ研修会にて行っている。また、現在、反社会的行動を伴い障がい者の支援研究会から研究協力者の紹介を受けてインタビュー調査を行っている。 これらの研究を通じて、性加害行為のあった知的障害者への障害福祉事業所における支援の状況や、支援者のニーズを明らかにし、知的障害者が性加害行為に至る背景要因や動機について明らかにしたい。そして、心理教育と障害福祉の支援による複合的な支援によって知的障害者が地域社会の中で安全に生活するための方法についての示唆を得たいと考えている。そこで、平成29年度は、性加害行為のあった知的障害者本人へのインタビュー調査を計画している。調査内容は、性加害行為に至ったきっかけや性加害行為のサイクルについてである。インタビュー調査ではリラプスプリベンション・モデル及びグッドライブズ・モデルの枠組みを参照しつつ、心理教育プログラム内の項目の一部を用いて、インタビューガイドを作成する。 この研究においては、研究協力者をどのようにして得るのか、知的障害のある研究協力者の研究参加への同意をどのようにして得るのか、また、面接の場所や時間といった枠組みをどのように構築するのかという問題がある。これらの課題について現在、反社会的行動を伴う障がい者の支援研究会において検討を行っている。そして、その研究会を構成している地域生活定着支援センターや弁護士の意見を得ながら、研究協力者の紹介など面接を行うための準備を進めているところである。 また、研究成果の公表については、性問題行動へのアプローチ研修会の協力のもと福祉の支援者を対象とした研修会を実施する準備を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に計画していた海外への先進的な取り組みの視察については、交付申請額よりも交付決定額が少ないこと、日本における現状を把握するためにアンケート調査やインタビュー調査がまず必要となったことにより、今回の研究では実施せず、現状のアセスメントと支援上の課題の抽出を中心に行うこととなった。そのため、質問紙調査のデータ集計作業や分析が平成28年度に引き続き平成29年度にも実施されることとなった。また、インタビュー調査を平成29年度に実施することとなった。そして、これらの調査および収集されたデータの集計や分析に係る費用を平成29年度に使用することが必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
質問紙調査の分析のための研究会の開催に係る費用、インタビュー調査等の調査を実施するための旅費等の調査関連費用や、分析のためのソフトウエアの購入費用や謝金等の費用として使用する計画である。また、調査結果の分析においては研究協力者から助言を得るための謝金として使用する。これらの調査結果については、研修会等を開催して成果の公表を行う予定であるが、それに関連する旅費等の費用としても使用する計画である。
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