研究課題/領域番号 |
15K21533
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
安藤 徹 神戸学院大学, 薬学部, 助手 (50639226)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軟部肉腫 / ホウ素中性子捕捉療法 / L-BPA / LAT-1 |
研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法は,腫瘍細胞に集積したホウ素(主にp-borono-L-phenylalanin,L-BPA)に対する熱中性子の照射により腫瘍細胞を選択的に死滅させる新たな治療方法として期待されている.しかし,BNCTによる治療効果の鍵となる腫瘍細胞への選択的なL-BPAの取込機構については,アミノ酸トランスポーター(主にLAT-1)が関与するとされているが,軟部肉腫では明らかでない. そこで本研究では,まず軟部肉腫である明細胞肉腫(CCS)のヒト由来細胞株4種と陽性コントロールとして,LAT-1の発現がすでに確認されているヒト由来乳癌細胞株であるMCF-7,ヒト由来悪性黒色腫細胞株であるG-361にて細胞株レベルでのLAT-1の発現をウエスタンブロット法を用いて確認したところ,発現の程度に違いはあるものの,CCS細胞株においてもLAT-1の発現が確認された.次に,LAT-1の発現とL-BPAの取込が相関するかどうかLAT-1阻害剤であるBCHを用いた取込試験をヒト由来CCS細胞株4種にて検討したところ,BCHの前処理によって,BCHとL-BPAは競合拮抗し,取込の低下を確認した.その阻害割合は細胞株毎に程度の違いが生じたため,LAT-1の発現量との関わりがあるものと考えられる. 本検討から,軟部肉腫であるCCSでもLAT-1は発現しており,L-BPAの取込に細胞株毎に違いはあるものの関与していることが示された.また,臨床で得られたCCSの組織標本においてもLAT-1の発現を確認している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BCHによるL-BPA取込の阻害割合とLAT-1の発現量の関わりは,ウエスタンブロット法によりLAT-1タンパク発現量を定量することで,相関関係の有無を確認する予定であったが,軟部肉腫細胞でのタンパク発現量の定量が困難であったことから,進捗が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
上記の課題として挙げられたLAT-1発現量の定量については,調査研究からRT-PCR法によるLAT-1のmRNA定量でもって代替可能であると考えている.RT-PCR法による検討を行っている文献を参考に,現在検討を行っている段階である.また,RT-PCRは本学共同機器を利用することで検討可能である. また,細胞での検討と平行して,動物を用いた検討である,担がん動物モデルを用いたL-BPA投与後のホウ素体内動態とLAT-1量との相関性の評価,担がん動物モデルでの腫瘍組織切片におけるL-BPA,血管,LAT-1分布の評価を行う予定である. 組織切片を用いた検討はすでに臨床検体において,兵庫県立がんセンター研究部須藤医師,同センター整形外科藤本医師と免疫組織化学に関する検討を行っていることから,同様の手法を用いて行う予定である.
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