研究課題
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は,腫瘍細胞に集積したホウ素(主にp-borono-L-phenylalanine,L-BPA)に対する熱中性子の照射により腫瘍細胞を選択的に死滅させる可能性を持つことから,難治性の軟部肉腫において新たな治療方法として期待されている.BNCTによる治療効果の鍵となる腫瘍細胞への選択的なL-BPAの取込機構については,アミノ酸トランスポーター(主にLAT1)が関与するとされているが,軟部肉腫ではその関係性は明らかでない.そこで本研究では,まず軟部肉腫である明細胞肉腫(CCS)のヒト由来細胞株4種と陽性コントロールとして,LAT1発現がすでに確認されているヒト由来乳癌細胞株である(MCF-7),ヒト由来悪性黒色腫細胞株であるG-361について,細胞レベルでのLAT1発現をウエスタンブロット法とリアルタイムPCR法を用いて確認したところ,発現の程度に違いはあるものの,CCS細胞株においてもLAT1が発現することを確認した.さらに,LAT1はCCS細胞株をマウスに皮下移植して作成した担がん動物でも発現していることを免疫染色法で確認した.次にLAT1の阻害薬である2-aminobicyclo-(2,2,1)-heptane-2-carboxylic acid (BCH)を用いたL-BPAの細胞レベルでの取込,担がん動物での集積を評価したところ,BCH処理によってL-BPAの細胞内取込と担がん動物での腫瘍組織への集積は30~50%低下することを確認した.この阻害率は細胞株毎に程度の違いが生じたため,LAT1の発現量との関わりがあるもと考えられる.本検討から,軟部肉腫であるCCSでもLAT1は発現しており,L-BPAの輸送にも細胞レベル,動物レベルで細胞株毎に違いはあるものの関与していることが示された.
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日本整形外科学会雑誌
巻: 90(6) ページ: 1211