研究課題/領域番号 |
15K21534
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 亮佑 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (80611540)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療ナノ粒子 / 粒子径制御 / 脂質-高分子複合ナノ粒子 / フィトケミカル / がん / 化学療法 |
研究実績の概要 |
本研究は、粒子径可変ナノキャリアによる、腫瘍血管から遠距離の低酸素領域に及ぶ広範囲がん組織への効率的な難水溶性薬物の送達を目的とする。低酸素領域は治療抵抗性・浸潤能の高さ、がん幹細胞の存在により有用な標的化部位である一方、送達効率の向上にはナノキャリアの柔軟な設計が要求される。本研究採択までに、研究代表者は35-200 nmにおける任意粒子径への制御性・高い難水溶性蛍光分子封入率を有するコア-シェル型ナノキャリア、脂質-高分子複合ナノ粒子 (LPN)を開発している。2年間に渡る研究期間のうち初年度となる平成27年度は下記の2点を達成した。 第一に、従来の粒子径制御性を保持しつつ85%以上の封入率を有するトリメトキシレスベラトロール (TMS)封入脂質-高分子複合ナノ粒子 (TMS-LPN)を開発した。TMSは多面的作用メカニズムにより抗腫瘍活性を発揮する一方で高い疎水性が難点であった。TMS-LPNは疎水性コア部への封入によって難水溶性を解決したと同時に、腫瘍血管から遠い低酸素領域へ薬物を送達するナノ粒子に要求される小さな粒子径と高い封入率の両方を満たした。 第二に、100 nm以下のTMS-LPNについて粒子径が小さくなるほど抗腫瘍活性が増大することを2次元細胞培養系で明らかとした。現在、細胞内取り込み量と放出プロファイルの評価を進めている。また、生体内腫瘍に近い特徴を有する3次元多細胞腫瘍スフェロイド (MCTS)評価系を構築した。本成果により、粒子径は抗腫瘍活性にも影響を及ぼすことを明らかとしただけでなく、MCTSにおける粒子径の影響を評価する準備を完了させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
40 nmを最小粒子径とした粒子径制御性と高い封入率を両立させる検討に時間を費やしてしまったため。当初は非メトキシ化体であるレスベラトロール (RSV)の封入に取り組んでいたが、10%以下と低い封入率が課題として生じた。ポリ乳酸グリコール酸共重合体 (PLGA)と比較して高疎水性の高分子であるポリカプロラクトンはRSV封入率を50%にまで向上させた一方で最小粒子径が100 nmとなった。粒子径制御性の維持にはPLGAの使用が必須であると判断し、封入薬物であるレスベラトロールの高疎水性誘導体を検討することで上述した問題の解決を図った。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況を「(3) やや遅れている」としたが、最大限の効率化を図りつつ当初申請計画通りの研究遂行に鋭意努力する。200 nm以下において脂質-高分子複合ナノ粒子 (LPN)の粒子径を意図通りに制御するために必要な条件はほぼ把握している。平成27年度中に終える予定だった3次元多細胞腫瘍スフェロイド (MCTS)での評価は、評価系構築自体は完了しているので早急に実施する。In vivo体内動態を評価するにあたっては当初LPN表面に疎水性蛍光分子を標識する予定であったが、塩により未標識時と比較して粒子径が著しく増大し計画遂行の障害となっている。調製条件の最適化により粒子径増大を回避するとともに、塩非含有疎水性金ナノ粒子封入LPNによるマイクロCTを用いた評価についても並行して検討する。
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