平成27年度および28年度において青年期にニコチン曝露歴があると EtOH 自発摂取の増加が認められ、さらにそれらの増加は、L-type Cav1 channels 阻害薬である nifedipineを脳室内投与することで、抑制されることを明らかにした。現在までに薬物依存は腹側被蓋野から側坐核へ投射している中脳辺縁ドパミン神経が重要な役割を果たしていることが報告されている。そこで本研究では、ニコチン慢性処置後におけるL-type Cav1 channelsであるCav1.2のタンパク発現量について検討したところ、側坐核領域でタンパク発現量の有意な増加が認められた。次に、側坐核領域における Cav1.2 と dopamine D1 receptor (DD1R) ならびに dopamine D2 receptor (DD2R) の局在を in situ hybridization 法に従い検討したところ、Cav1.2 は、DD1R および DD2R 陽性神経細胞に発現していることが確認された。そこで、ニコチンを慢性処置した後にEtOH 自発摂取を行った時に側坐核領域における DD1R および DD2R 陽性神経細胞の活性化が認められるか否かを、c-fosとの triple 蛍光染色を in situ hybridization 法に従い検討した。その結果、ニコチン慢性処置後のEtOH 自発摂取時では側坐核領域の DD1R 陽性神経細胞での c-fos 発現の増加が認められた。以上のことから、青年期にニコチン曝露歴があると EtOH 誘発報酬効果の亢進ならびに EtOH 自発摂取の増加が認められ、その増加機構には側坐核領域のL-type Cav1 channels の活性化が深く関与し、特にDD1R 陽性神経細胞を活性化することで調節されていることが示唆された。
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