汚染恐怖は環境内の汚染源を過剰検出する病態と捉えられる。そこで本研究では,嫌悪感を喚起する質感として湿り気に注目し,その視覚検出過程を検討した。心理物理学的実験の結果,実験参加者は視覚呈示された刺激の水分量を正確に評価でき,その評価は物体表面に分布する高輝度領域数によって正確に予測できた。加えて,湿り気に関連する質感のなかでも,特にヌメリが嫌悪感や汚染リスク推定に影響していた。さらに,嫌悪感受性の高い者においてのみ,知覚時の嫌悪感が感染症への懸念に結びつきやすかった。以上より,汚染恐怖の病態を理解するうえでは,湿り気の視覚検出過程とともに,より高次の評価過程にも注目する必要性が示唆された。
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