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2017 年度 実施状況報告書

高齢者の転倒発生を予測するスマートフォン用アプリケーション開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K21545
研究機関吉備国際大学

研究代表者

井上 優  吉備国際大学, 保健福祉研究所, 準研究員 (90726697)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード転倒発生予測 / 一般高齢者 / アプリケーション開発
研究実績の概要

29年度中に計測を終えた結果を基に転倒経験者と非経験者の判別が可能かを検討した.その結果,転倒の有無により,これまでに検討してきた指標が有意に異なることや歩行中の変動パターンに一定の違いを認めるものの,その指標のみでは判別の精度は十分とは言えない結果を得ている.
また追跡が可能であった対象者への追跡調査の結果,新たに3名が転倒を経験したことが明らかになった.そのうち,新規発生は2名であった.これまでに得たデータのうち,新たに転倒が発生した者と転倒未経験者の比較を行った.しかしながら転倒発生者が7名と少なく,これまでに検討してきた解析方法だけでは全例に共通する特徴の抽出は不十分な状況である.平成29年5月時点で転倒発生件数が少なかったため,虚弱高齢者を対象とした新たな計測を開始し,現在,転倒発生の有無について逐次確認を進めている状況である.
本研究の測定対象者は,これまでの先行研究の報告に比べて転倒発生率が低いことを確認している.このような集団を対象として得られる予測方法は,より細かな違いを捉えることが求められるため,そこから得られた知見はより精度の高い方法となる可能性があると考えられる.そのため今後は,加速度の解析方法に新たな方法を加えることも検討している.また一般的に介護予防支援事業等で測定されることの多い運動機能評価項目も加えて,決定木分析などの階層的に特徴の抽出が可能な解析方法も導入して,転倒予測に必要な情報を整理する予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

平成27年度は,地域介護予防教室に参加している高齢者を対象に歩行中の加速度波形を記録し,その解析により転倒経験者と非経験者の判別が可能であるのかを検討する研究を計画した.加えて,転倒を予測しうる指標が何らかの介入による身体機能の変化を捉えることができるのかを,脳卒中患者を対象に計画した.その検討では,歩行中の加速度波形解析を実施し,一定期間のリハビリテーションの実施により得られた機能回復と転倒予測指標との関連性を縦断的に検討した.その結果,27年度は一般高齢者65名,脳卒中患者20名の計測を終え,横断データの解析結果から,一般高齢者と脳卒中患者ともに,転倒低リスク者は歩行円滑性指標の変動性は小さく類似しているものの,転倒高リスク者は変動性が大きく異なるパターンを示すことを確認した.
28年度は介護予防教室に継続的に参加している一般高齢者37名の縦断的に運動機能,認知機能,歩行中の体幹加速度の記録を行った.教室参加後には歩行速度や認知機能に有意な改善を示し,参加者は確かな身体機能の変化を示していた.さらに本課題で着目した解析指標を前後比較した結果,歩行円滑性指標は有意な変化を認め,歩行速度のような時間距離指標では捉えることのできない,歩行中の動態変化を捉えていることが示唆された.その一方で,29年5月時点で全対象者119名のうち,転倒発生件数が4名と非常に少なく,新規転倒発生に関わるデータ蓄積が不十分な状況であった.そのため虚弱高齢者が利用する通所サービス事業所に新たに協力を依頼し,29年12月より計測を開始した.現在,当該施設において25名の測定を終えている.横断データについては計144名の結果を得ている.また新たに3名が転倒を経験し,そのうち新規転倒発生者は2名でデータ解析を進めている状況である.

今後の研究の推進方策

新たな協力施設における計測は約50名程度の実施を見込んでおり,計測終了後6か月経過時点の転倒有無,生活概況の調査を適宜実施する予定である.
現時点までに得られた結果からは,前述のように体幹加速度の解析から得た指標が,転倒経験者と非経験者の判別が可能な指標であることが示唆されている一方で,その判別の精度にはまだ検討の余地があると考えられる.歩行中の体幹加速度にとどまらず,他の運動機能を表す指標との組み合わせにより,判別精度が向上するのか,転倒発生の予測精度が向上するのかを検討する予定である.

次年度使用額が生じた理由

通所サービス事業所の協力を得て実施する新規計測に要する旅費や謝金を確保すること,および試作アプリケーションの使用感に関する調査にかかる旅費を確保するため次年度使用額が生じた.30年7月までに当該施設における測定を終える予定としており,これまでに得た解析結果を基にアプリケーションの開発を進める.その上で,これまで協力を得た理学療法士,保健師等に試作アプリケーションの使用感に関する調査にかかる旅費,研究実績の報告に係る旅費として使用するほか,論文投稿にかかる英文校正費,掲載料として使用することを予定している.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 回復期リハビリテーション病棟入棟脳卒中患者における日常生活動作能力の改善効率予測ルールの検討2017

    • 著者名/発表者名
      井上優,平上二九三,原田和宏,平上尚吾,松葉潤治
    • 雑誌名

      吉備国際大学保健福祉研究所研究紀要

      巻: 18 ページ: 49-54

  • [雑誌論文] 脳卒中回復前期のADL低改善患者の特性と介入ポイント2017

    • 著者名/発表者名
      平上二九三,平上尚吾,井上優
    • 雑誌名

      吉備国際大学保健福祉研究所研究紀要

      巻: 18 ページ: 35-43

  • [雑誌論文] 脳卒中理学療法における目標設定が機能改善に及ぼす効果のエビデンス2017

    • 著者名/発表者名
      原田和宏,平上二九三,井上優,橋立博幸,齋藤圭介,香川幸次郎
    • 雑誌名

      吉備国際大学保健福祉研究所研究紀要

      巻: 18 ページ: 29-33

  • [学会発表] 歩行動態の変動性指標は運動介入後の歩行状態の変化を捉えることはできるのか?2017

    • 著者名/発表者名
      井上優,倉地洋輔,柳原順子,鈴木美穂,原田和宏
    • 学会等名
      第52回日本理学療法学術大会
  • [学会発表] 短期間低頻度の運動介入は地域在住高齢者の認知機能を改善させるのか?2017

    • 著者名/発表者名
      倉地洋輔,柳原順子,鈴木美穂,井上優
    • 学会等名
      第52回日本理学療法学術大会
  • [学会発表] 回復期リハビリテーション病棟入棟時の簡易な情報から日常生活動作改善の効率性が予測できるのか?2017

    • 著者名/発表者名
      井上優,妹尾祐太,戸田晴貴,津田陽一郎,池田健二,高尾祐子
    • 学会等名
      第54回日本リハビリテーション医学会学術集会
  • [学会発表] A Clinical prediction rule for stroke rehabilitation efficiency.2017

    • 著者名/発表者名
      Yu INOUE, Shogo HIRAGAMI, Junji MATSUBA, Kazuhiro HARADA, Fukumi HIRAGAMI
    • 学会等名
      WCPT-AWP & PTAT Congress 2017
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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