研究課題/領域番号 |
15K21547
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
小川 健 専修大学, 経済学部, 講師 (10622201)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再生可能資源 / 共有資源 / 選好の異質性 / 貿易パターン / 貿易利益 / 資源管理方法 / 漁獲枠 / 微分ゲーム |
研究実績の概要 |
2年目は以下の点を重視した研究を行い、学術発表等に努めた。 (1)水産物貿易・再生可能資源財の貿易に関してサーベイ的な項目が2004年頃以降十分ではなかったという思いがあり、特に一般均衡を念頭に置いた項目を中心にした、サーベイ報告をまとめた。国際漁業学会2016年度大会(専修大学)のシンポジウムにおいて報告し、このために本大会の会場責任者を務め、およびシンポジウムの企画者の1人を務めた。また、シンポジウム報告の形でサーベイ報告を、ハンドブックの1章のような使い方が出来るような形でまとめた。 (2)クロマグロをはじめ多くの共有漁業資源で実際に取られようとしつつある漁獲枠の各国配分について、「譲渡不可能な」漁獲枠の各国配分にはそもそも妥当性がないことを、前提に関する微分ゲームで理論的に立証し、WFC2016(釜山)・IIFET2016(Aberdeen)など漁業・漁業経済での国際学会において報告した。 (3)クロマグロやニホンウナギなど国際的に共有されている再生可能資源に関し、その選好の各国内での異質性が貿易に与える影響について、貿易パターンを中心に理論研究し、報告を行った。また、その研究の中での本質的修正が必要な部分を修正し、日本水産学会2016秋(近畿大学)、環境経済・政策学会2016(青山学院大学)、日本国際経済学会2016秋(中京大学)といった、水産・環境・国際経済などの専門的な国内学会・研究会を通じて報告をした。 (4)水産資源とモデル構造が類似する天然林に置き換えて、各国保有の資源財にその資源財の産地による選好の異質性、および技術的規制を取り入れた貿易の分析を、FORMATH2017(広島)など日本国内で開催の森林系の国際学会で報告し、そのコメントなど森林の知見を水産物貿易に取り入れた。また、類似の分析をサバに置き換えた報告を、日本水産学会でのサバのイベントで行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた「シミュレーション」を利用した分析に関しては確かに十分とは言えない。これは、サーベイ的なまとめ、ないしその報告に関する部分が十分ではないと判断したからである。そのため、当初の予定にはなかったが、サーベイ的なまとめをあえて行い、そのために国際漁業学会など小規模な学会の大会会場責任者・シンポジウム立案等を引き受けてまで本報告をシンポジウムにて行った。また、本報告の中で、従来貿易まで含めては充分に議論できていなかったレジーム・シフトについて、正確な理解及びレジーム・シフトと本研究との関係性について、分析の必要性が明らかとなった。 選好の異質性に関する分析の上では、より査読適性の高いようにモデル構造を所得に準線形な形状に切り替える分析、および集計的な代表的個人に切り替えられないことの立証ないし切り替えての分析の必要性が報告の最中で明らかとなった。 共有資源に関する分析では、クロマグロとニホンウナギなど重要な資源はいくつか存在するが、その特性の違いおよび蓄養(稚魚を天然から獲って大きくする手法)と成魚の天然漁獲のモデルにおける違いなど、従来は「貿易まで含めて議論する上では」一緒くたに扱ってきた項目について、そのモデルにおける特性の違いなども含めて議論する必要が明らかとなった。 ウナギなど、密漁および過少申告、そして香港経由など経路に対する疑いの目が必要な項目、そして仲買人に関する適正性が疑われる地域制度等、新規に議論すべき項目が次々と明らかとなった。本来価格規制や数量規制を仲介業者に流す際のみ単純に行う部分についてはその不当性が言わずと知れず明らかであると経済理論ではとらえがちだが、現実の水産業に落とし込むことでそのことが意外と理解されていない面があることも明らかとなった。 他にも各種エコラベルの意義の違いなど、新規課題が続々見つかった意味では概ね順調と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はサーベイ報告及びその実施のための学会の大会運営引き受け等が予想外に大きかったため、十分進んではいなかったシミュレーション的な分析に関しても少しずつ取り入れていきたいと考えている。 また、クロマグロとニホンウナギの違いをモデルに反映させるなど、より現実的な側面に即した分析を行っていきたいと考えている。 さらには、投稿におけるモデル適性など、より学術雑誌および論文集などに掲載しやすい形での分析の頑健性、そして微分ゲームだけではない繰り返しゲームなどへの研究の拡張など、より多くの人に捉えられやすい形への研究の進化についても取り入れていきたいと考えている。これらの研究には、生産・収穫関数に関する収穫逓増型の取入れなど、この部分ではできていないが他の分野では進んでいる研究の知見を取り入れることも行っていきたい。 これらの研究に並行して、水産物貿易から発見できた一部研究結果に関する他の資源などへの頑健性などもあわせて取り入れ、他の資源での見解からの水産物貿易への取入れなども行っていけるようにしたいと考えている。 さらには、所得に関する準線形の効用関数への移行、および部分均衡分析での近年のさらなる進展を取り入れた一般均衡分析での研究、環境と貿易の分析と整合的な共有資源でのモデル開発などへも拡張を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加・報告および国内学会参加・報告の旅費が次年度以降も多めに必要と判断したため。および、ガタが来ていて研究に支障を来たしつつあるPCの購入などを想定する際、少し次年度使用額が必要と判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会参加・報告および国内学会参加・報告など、ならびにPC購入を主に使用計画とする。それ以外に英文校正や投稿料などが必要になった際に使用する。
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