研究課題
前年度ではAMPKを欠失させた癌細胞に対して、in vitro、in vivoの系を用いて血管新生阻害剤に対する耐性メカニズムに関して検証したが、AMPKが明らかに耐性に関与しているかどうかの結論には至らなかった。従って、次に、癌細胞のエネルギー代謝に関わるとされる複数の遺伝子を選定し、それらが血管新生阻害剤耐性に関与するかどうかについて検証した。癌細胞の解糖系エネルギー代謝に関わるピルビン酸キナーゼ(PKM2)、癌細胞の乳酸排泄に関わるMCT1,MCT4の発現調整を行っているCD147を標的とし、それらを欠失させた癌細胞を用いてin vitro、in vivoの系で血管新生阻害剤に対する耐性メカニズムに関与するか検証した。癌細胞はPKM2をノックダウンする事により、それだけで強いアポトーシスが引き起こされた。PKM2は癌細胞の生存に大きく関与する分子である事が明らかになり、今後の治療標的分子として有望であると考えられた。次にCD147をノックダウンした癌細胞では、リアルタイムPCRによる遺伝子発現の検証ではMCT1が有意に低下、MCT4は低下が見られなかった。PKM2、CD147欠失癌細胞をマウス皮下に接種し血管新生阻害剤の効果の違いについて評価したが、どちらの癌細胞も対照群と大きな差は見られなかった。今回、エネルギー代謝に関わる分子を癌細胞で欠失させ、血管新生阻害剤耐性について検証したが、標的とした分子が明らかに関与しているとは言えない結果であった。次に血管新生阻害剤では、虚血にともなう低酸素が引き起こされ低酸素誘導蛋白(HIF1)が増加する事が報告されている。また、HIF1の下流蛋白には血管内皮増殖因子(VEGF)があり、これらが癌の血管新生の鍵とされている。HIF1及びVEGFを標的とする薬剤の効果について検証し、それらを報告した。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Neoplasia
巻: Vol18 No7 ページ: 413-424