本研究の目的は、恋人に対する支配的な行動の1つである束縛に着目し、束縛が恋愛関係性に及ぼす影響について明らかにすることであった。 最終年度に当たる平成29年度は、これまで収集したデータの精査とまとめの年と位置付け、収集したデータにさらなる分析を行った。前年度に項目反応理論を用いて開発していた「弱い束縛」因子と「強い束縛」因子からなる束縛尺度がさらに洗練されたものとなった。また、弱い束縛と強い束縛が恋愛関係に及ぼす影響について検証した。分析の結果,弱い束縛は恋愛関係にポジティブな影響を及ぼすものの,強い束縛はネガティブな影響を及ぼす可能性が示唆された。恋人に対して生じる支配的な行動の1つである束縛は,束縛の強さによってその影響が逆方向であることが示された。このことは、支配的な行動の被害者がなぜ関係の終焉を選択しない場合があるのか、また、加害者がなぜ支配的な行動を選択する場合があるのかについて示唆的な知見を提供している。すなわち、束縛の強度によっては関係維持行動にも関係破綻行動にもなる場合があるということである。支配的な行動が生起している恋愛関係の予防や介入を考える時、ただ問題だと考えられることを伝えるだけではなく、生じている行動の強度によって異なる方略を駆使していく必要があるといえるだろう。 投稿論文は現在のところ修正再審査中であり、学会発表は2度行うことができた。発表できていない知見については、国内の関連する学会で報告していく予定である。また、研究成果を広く社会に換言すべく投稿論文としても刊行予定である
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