本研究では、胎児期の低栄養が出生後の消化管(小腸および大腸)に及ぼす研究について詳細に検索することにより、妊産婦・胎児・新生児・乳児の栄養指導に役立てるための基礎的実験を行うことを目的としている。 平成29年度はWistar系妊娠ラットを妊娠初期(妊娠0~6日)または妊娠後期(15~21日)のいずれかの時期に低栄養を行い、その他の時期は通常摂食させて仔を出産させた(妊娠初期低栄養群、妊娠後期低栄養群)。対照群(正常群)は妊娠期間中通常飼育を行った。各群の母ラットから出生した新生仔を用いて生後0日齢(出生直後、未授乳)、7、14、21日齢の腎臓、小腸(空腸、回腸)および大腸(盲腸、結腸近位部、結腸遠位部)を採取し、超微形態学的に検索を行った結果、生後0日齢(母乳未摂取)の対照群(正常群)の空腸および回腸では管腔に伸びた絨毛とその基部に浅い陰窩が観察された。一方、妊娠初期および妊娠後期低栄養群の空腸では対照群と比較していずれの時期においてもほとんど違いが見られなかった。回腸では、生後0日齢において妊娠初期低栄養群よりも妊娠後期低栄養群において対照群よりも短い絨毛が認められた。妊娠初期および妊娠後期低栄養群の盲腸では、対照群と同様に管腔側に向かって伸びた絨毛様構造が観察された。妊娠初期および妊娠後期低栄養群の結腸近位部では、対照群と同様に管腔側に向かって伸びた絨毛様構造がヒダの上およびヒダとヒダの間に観察された。結腸遠位部では、対照群と同様に絨毛様構造は見られなかった。これらのことから、妊娠中に低栄養状態の母親から生まれた新生仔の回腸において、対照群よりも短い絨毛が観察されたことから小腸、特に回腸に影響を及ぼすことが示唆される。また、妊娠中の低栄養の時期によっても差異が認められたことから、出生後の小腸における栄養の消化吸収機構に影響を及ぼすことが示唆される。
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