研究課題/領域番号 |
15K21561
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
保坂 亮介 福岡大学, 理学部, 助教 (80569210)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 確率共鳴 / 非同期神経回路 / 相関 / パワースペクトル / ノイズ / カオス |
研究実績の概要 |
本研究課題では非同期ニューラルネットワークを用いたノイズ無し確率共鳴を実現する。研究期間内には以下の研究課題を実行する計画である:(平成27年度) 興奮性ニューロンと抑制性ニューロンから成る非同期ニューラルネットワークの作成;(平成28年度) 非同期ニューラルネットワークの独立性の評価;(平成29年度) ノイズ無し確率共鳴の性能評価。 平成28年度には,平成27年度に実装されたニューラルネットワークの各ニューロンの状態変数が互いに非同期化していることを評価した。評価関数には相関係数を用い,十分に長い時系列を生成して評価した。その結果,ニューロン間の相関は低く保たれ,非同期神経回路が出来ていることが確認された。また,各ニューロンの自己相関も低く,これより律動的ではなくランダムに各ニューロンが活動していることがわかった。このことは,ウェーブレット解析を用いた時間周波数解析でも確認された。 確率共鳴に用いられるノイズには通常は白色ノイズが用いられるが,ピンクノイズやブラウンノイズなどの有色ノイズを用いることによって、信号検出能力が向上するという報告がある。 そこで非同期ニューラルネットワークのニューロンの状態変数が,より何色のノイズに酷似しているかをパワースペクトルから評価した結果,相関の少ないホワイトノイズに近いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
時系列間の相関にはペアの相関の他に,高次相関と呼ばれる 3 つ以上の時系列で現れる相関があり,ニューラルネッ トワークではこの高次相関がしばしば現れる。 この高次相関の有無も同時に評価し,信号検出への影響を続く課題で評価する予定であったが,この解析には未着手である。また,各ニューロンの状態変数のリアプノフ指数を計算することで,状態変数時系列のカオス性を定量化し,短期間予測可能性と長期間予測不可能性の信号検出能力への影響を評価する予定であるが,これも今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
作成された非同期ニューラルネットワークに微弱な入力信号を入力し,その検出を行う。入力信号には (1) 正弦波,(2) 周波数と振幅の異なる正弦波の重ねあわせ,(3) ローレンツ方程式から作成したカオス時系列,(4) ヒトの母音波形,の 4 種類を用いる。性能評価は先行研究との比較により行い,比較対象は,(1) ネットワーク化しない検出器に白色ノイズを印加した確率共鳴,(2)Collins らの提案したネットワーク化した確率共鳴,(3) バーストニューロンモデルを検出器としたネットワーク化した確率共鳴,を用いる。ノイズ強度を徐々に増やした時に (1) 最高でどれだけの再現度で検出できるか,(2) ノイズの変化に対してどれだけ非選択的に信号検出できるか,を基準に評価する。元信号と検出された信号の振幅は異なることが予測されるため,元信号と検出された信号の比較は相関係数を用いて行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度から繰り越した513826円を該当年度の旅費に使用する計画であったが,旅費が想定よりも抑えられたため,239268円が残高として残った。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越された研究費は次年度の旅費ならびに論文出版費用として使用する。
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